保育園であざをつけられた長男の父親(写真:男性提供)
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 近年、各地で園児への「不適切保育」が次々と明らかになっている。背景には何があるのか。AERA 2025年2月3日号より。

【調査結果】不適切保育の一割が虐待という事実

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 こども家庭庁が23年に初めて公表した「不適切な保育」の実態調査によれば、22年4~12月に全国の認可保育所で914件の「不適切な保育」が確認された。うち「虐待」は90件に上り、身体的虐待は36件もあった。

 背景に何があるのか。

『不適切保育はなぜ起こるのか』の著書もある、保育ジャーナリストで「保育園を考える親の会」顧問兼アドバイザーの普光院(ふこういん)亜紀さんは、不適切保育が起こる要因はさまざまだが(1)園の保育方針、(2)保育士の資質、(3)保育体制、(4)子どもの特性──などが関係している場合が多いと指摘する。

「まず、(1)の保育方針は、子どもを大人に一方的に従わせ統制する考え方の場合に問題が出やすくなります。例えば、給食の『完食ルール』など一律のルールを設けている場合などです」

余裕がない保育の現場

 本来、保育は子ども一人一人の発達や個性に合わせて行わなければいけない。集団生活だからと子どもの発達に合わないことや嫌なことを無理強いし、人格が尊重されない体験を積ませることは、子どもの心にネガティブな影響を与え、不適切な保育になるという。

 (2)の「保育士の資質」は、保育士の子どもの発達や個性への理解不足、スキル不足などを指す。(3)の「保育体制」は、保育士の配置や連携の体制のこと。保育の現場は余裕がなく、保育士が保育を振り返る時間がなく保育士同士の情報交換も滞っている場合に問題が起こりやすいという。(4)の「子どもの特性」は、集団行動が苦手だったりする子どもの個性や発達がある場合。

「(2)の保育士の資質や(3)の保育体制は(1)の園の方針によって左右されます。また、保育士の資質を高めるには、保育体制がそのための時間や労力を傾けられるようになっている必要がありますが、現場にゆとりがありません。そして、(4)の子どもの特性に柔軟に対応するには保育士の資質が高くなければならず、これらの要素は互いに影響を与え合っています」(普光院さん)

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