日本の社会福祉は「申請」がベースになっている。申請しなければ利用できない制度が多い、申請主義なのだ。中には生活が困窮しているのに、その仕組みや手続きがわからなくて申請ができず、生活の困窮がさらに深刻化するケースもあるという。
昨今は、「孤独」に付け込んだ悪徳業者も増えているという。
「社会に出て働いて高齢者になった人と違って、10代の時からずっとひきこもりで、世間の荒波にもまれることなく生きてきた人が高齢になった時、どうなってしまうのかととても心配です」
財産2億円超を使い切る
金銭感覚の欠落も問題だという。
「ひきこもりの人の中には、月30万円のおこづかいをもらって毎月使い切るのが当然のように思っている人もいます。そういう人が、親亡き後に、親が残したお金を計画的に使い続けるといった発想ができるとは思えません。お金に苦労せずに生きてきたわけですから。そうした相談者には、キャッシュフロー表(収支表)を作って見せて、使っていい金額を理解させるようにしてください、とアドバイスしています」
畠中さんが受けた相談では、50代のひきこもりの男性が、わずか3年で相続した財産2億円超を使い切ってしまったという事例もあったという。
こうした状態にならないためにも、畠中さんは、親が存命のうちに社会的な支援を見つけ、きょうだいなどの協力が仰げる体制を作っておくべきだと話す。
「貧困は、生活保護というセーフティーネットである程度カバーできます。しかし、孤独、孤立は本人が努力しようと動かない限り、なかなか改善しづらい」