管理する相続財産の内訳がシンプルだったこともやめた理由のひとつ。生前から父名義の銀行口座を把握し、通帳とカードを預かっていたし、株券などの有価証券もなかった。もし被相続人が使っていた銀行の口座がわからない場合などは、ある程度の費用を払ってでも信託銀行に依頼をした方が精神的にも時間的にも負担は軽減したと思う。

 また、海外に不動産があったり、相続財産がとても大きく複雑だったり、相続人同士がいがみあっていて話し合いが厳しかったり、相続人が高齢だったりといった場合なども信託銀行に依頼するほうが良いと感じた。とにかく相手は慣れている。

頂上は見えている

 姉は「せっかくここまで相談もしたし、信託銀行でもいいのでは」と言っていたのだが、私は自分たちでできることはやってみたいと思うようになった。初めての相続業務。チャレンジしてみたいと思ったのだ。戸籍謄本も揃っており、相続税の申告日までにやるべきこともわかってきた。知識が多少ついた今ならば、信託銀行に丸投げをしなくても自分たちで何とかできるかもしれないと思った。

 そうしたとき、友人の紹介で評判のいい税理士に出会った。父が亡くなって5カ月目だった。姉と3人で都内のホテルで挨拶し、正式に依頼した。7カ月目に税理士による「遺産分割協議書」が完成。8カ月目にその遺産分割協議書に署名と調印を行った。「遺産分割協議書」は、10カ月以内に作成し、そこに相続人全員が署名・捺印しなければならない。この時点でもう9合目といっていい。頂上は見えている。

次のページ
慎重にやらなければ