変わり種としては、人気漫画「銀魂」のアニメ版で脚本を担当するなどアニメファンの間では名を知られる脚本家の大和屋暁。持ち馬に銀魂ゆかりの馬名を付けることで有名で、その代表的な持ち馬のジャスタウェイは日本国内で天皇賞(秋)、安田記念とG1を2勝しただけでなく、2014年にはドバイデューティーフリー(現ドバイターフ)を圧勝して海外G1をも制覇。当時は300万アメリカドル(約3億2000万円)だった1着賞金をゲットし、国内分と合わせて総賞金は約9億円に達した。ちなみにジャスタウェイは引退後に種牡馬入りし、その産駒がデビュー前から高額で取引されるなど前評判は上々。今年からデビューする産駒たちの活躍次第では種牡馬としての価値はさらに上がってくるだろう。
馬主となる有名人は、もちろん日本人だけではない。近代競馬発祥の地であるイギリスにも競馬に惹きつけられた著名人はもちろん存在する。サッカーのプレミアリーグで屈指の名門であるマンチェスター・ユナイテッドで27年間も監督を務め、名将とたたえられたアレックス・ファーガソンは、2001年から2002年にかけてG1を7連勝したザ・ロックことロックオブジブラルタルの共同馬主だったことで知られる。もっとも、同馬が活躍後に種牡馬入りする際には所有権を巡って世界的なオーナーブリーダーのクールモアグループとのトラブルが生じて裁判ざたになったことでも有名になってしまったが…。
そのファーガソンの指揮下でもプレー経験があり、イングランド代表としても活躍したマイケル・オーウェンも競馬好きで有名。オーナーブリーダーとして生産にも携わる熱の入れようで、自らが生産して共同馬主として所有したブラウンパンサーは2014年のG1愛セントレジャーを制した。さらに昨年11月にはなんとアスコット競馬場でアマチュア騎手としてデビュー。芝7ハロンのチャリティレースにて2着と善戦している。
だが、イギリスの有名馬主といえば、彼ら以上に欠かせない人物がいる。国家元首たるエリザベス女王その人だ。子供のころから乗馬などで馬に親しんでいた女王は競馬の発展に尽力してきたのはもちろん、馬主・生産者としても成功。父のジョージ6世の生産馬で自身の所有馬がG1を制したほか、種牡馬としても成功したオリオールや、1970年代に仏オークスなどを勝ち、後に日本の競馬史に残る名馬となったディープインパクトの曽祖母としても知られるハイクレアなどを所有。毎年6月のロイヤルアスコット開催には欠かさず観戦に訪れており、自身の名を冠したクイーンエリザベス2世ステークスは欧州マイル戦線の重要G1レースとなっている。日本のエリザベス女王杯も、この偉大なるクイーンの名前に由来したG1レースだ。
もちろん、こうして成功した有名人馬主の陰には、高額で購入した愛馬が結果を残せなかった有名人馬主も数多くいる。だが、それでも馬主を続けている有名人、馬主になってみたいという有名人がいるのもまた事実。それだけの魅力が競馬にはあるのだろう。競馬新聞を見る機会があれば、ぜひ馬主欄もチェックしてみてほしい。意外な名前をそこに見出すことがあるかもしれないから。(文・杉山貴宏)