2017年有馬記念のレース後にキタサンブラックをねぎらう北島三郎  (c)朝日新聞社
2017年有馬記念のレース後にキタサンブラックをねぎらう北島三郎 (c)朝日新聞社
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 第41回マイルチャンピオンシップが11月17日、京都競馬場で行われた。秋のG1シーズンも深まってきたが、過去の名馬や名シーンを取り上げた記事や競馬の話題をあたらめて振り返る(この記事は2018年9月1日に配信した内容の再掲載です。情報は配信時のままです)

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 近代競馬の歴史を紐解くと、かつては日本でも皇族や華族、政府高官や高級軍人などが集って競馬を催していたように、競馬は上流階級の娯楽だった。今では一般の方も馬券を買えるようになって幅広く楽しまれているが、それでもいわゆる中央競馬、JRAで馬主となれるのは安定した高収入が約束されたひと握りの人たちだけだ。

 それゆえ、必然的に馬主には会社社長など財界の成功者が多くなっているが、中には芸能界やプロスポーツ界での成功で財を成して馬主として競馬界に入ってくる人たちもいる。

 最近でもっとも有名な芸能人馬主といえば、やはり2017年まで現役最強馬として君臨していたキタサンブラックを所有した演歌歌手の“サブちゃん”こと北島三郎(敬称略、以下同)だろう(法人馬主としての名義は有限会社大野商事)。キタサンブラックは菊花賞、天皇賞、ジャパンカップ、有馬記念などG1レースを7勝し、2016年と2017年に2年連続して年度代表馬に選出された。JRAによると、その収得総賞金は18億7684万3000円。これは現時点でJRA歴代1位だ。

 しかも、キタサンブラックは引退して種牡馬入りするに際し、総額13億5000万円(一口2250万円×60口)という破格のシンジケートが組まれた。大野商事が何口を保有しているかは明らかではないが、種付け料500万円のキタサンブラックにはすでに200頭近い種付け希望が集まっているだけに、種牡馬として成功すれば今後も相当の収入が継続的に見込める。馬主にとってはまさに足を向けて寝られない恩人ならぬ恩馬というところだろう。

 もっとも、サブちゃんは順風満帆な馬主人生を送ってきたわけではない。所有馬が初めてJRAの重賞を勝ったのは馬主になってから約40年後(2001年にニュージーランドトロフィーを制したキタサンチャンネル)のことだった。その点、馬主になってすぐに所有馬がG1を勝った元プロ野球選手の佐々木主浩は強運の持ち主と言っていい。

 横浜(現・横浜DeNA)ベイスターズで「ハマの大魔神」と呼ばれた絶対的なクローザーとして君臨し、メジャーリーグでも活躍した佐々木は、初めて所有してたアドマイヤマジン(アドマイヤの冠名でおなじみな近藤利一との共同所有)がいきなりオープン入り。2012年にはマジンプロスパーがG3阪急杯で早くも重賞初勝利を達成する。さらに同じく2012年にはヴィルシーナが3歳牝馬クラシックの桜花賞、オークスや秋華賞、エリザベス女王杯ですべて2着と善戦し、2013年には満を持してヴィクトリアマイルで佐々木にG1初勝利をもたらした。ちなみにヴィルシーナはさらに翌2014年もヴィクトリアマイルを連覇し、引退までに約4億6000万円の総賞金を獲得している。

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驚異的な大魔神・佐々木