「投手を守る意識が強い。チーム事情があり無理な登板を要求されることもあります。話題の投手などは営業的側面が絡むこともある。そういったことを一切シャットアウトして無理な登板はさせない。技術はもちろんコンディションやメンタルなど全てを大事にするコーチ。投手陣から信頼される理由もわかる。スカウトの立場からも選手を安心して預けられる」(在京球団スカウト)
日本ハムコーチ時代は斎藤佑樹の登板など投手起用を巡り、栗山英樹監督(当時)と意見が対立したともいわれる吉井コーチ。投手としての能力や成績を考慮せず“話題性重視”で選手を出場させることについて、吉井コーチは最後まで反対していたという。
佐々木の1年目のキャンプでも常に選手が成長することを第一に考え、オーバーペースにならないように心がけていた。鳴り物入りでのプロ入りとなれば、ファンからは早期の活躍が期待される。プロ野球は“客商売”という要素もあり、時に選手のコンディションなどを度外視した起用もされることもあるだろう。だが、吉井コーチはそういった周囲の声には耳をかさなかった。
「(明確な育成プランをもとに選手を成長させ、周囲の雑音から守る難しさは)阪神の藤浪晋太郎の苦労を見ると痛感する。全国区の人気球団で周囲からの注目度は想像を絶する。グラウンド外での営業活動にも引っ張りだこだった。今は技術面で悩んでいる。盾になって守ってくれる投手コーチが必要だったのかもしれない」(在京球団スカウト)
藤浪は高校時代から順調に大投手への道を歩んでいた。大阪桐蔭のエースとして12年の甲子園で春夏連覇に貢献。特に夏は準決勝、決勝で2試合連続完封勝利とずば抜けた投球を見せた。同年のドラフト1位で阪神に入団後も1年目から10勝を挙げ、そこから3年連続で2ケタ勝利をマーク。15年には最多奪三振のタイトルも手にし、さらなる飛躍を予感させた。だが、その後は成績が下降。なかなか結果を残せないシーズンが続いているが、現在の低迷の原因として高卒プロ入り後からの“投げすぎ”を指摘する声もある。