原点に返って「安倍政治」を否定すべき
したがって、今の石破氏にとって一番大事なことは、自民党の内部に気を使うことではなく、また、単に野党との取引で政権の維持を図ることでもなく、まず、国民の支持率を高める政策やパフォーマンスを一つずつ積み上げていくとともに、国民の期待を裏切るようなことを極力やらないようにすることだと考えるべきだろう。
再び国民人気が高まれば、自民党内の石破降ろしも抑えることができ、また、野党が予算案や法案に反対しても、政局のために反対ばかりしている野党という批判が再び効果を持つようになるはずだ。
では、どうやって、国民の支持率を上げれば良いのだろうか。
ここで注意すべきは、ばらまき政策を野党と競うのは絶対にやるべきではないということだ。なぜなら、そんなことをしても、政権維持のために野党の主張を受け入れただけと見られ、石破氏の評価が下がる一方、手柄は野党に行くだけだからだ。
特に、無責任な「財源論を全く無視したばらまき」は、マスコミの批判を呼ぶことは確実で、石破氏の誠実で真実を語る政治家というイメージを著しく崩すので、百害あって一利なしだというべきだ。
そう考えていくと、支持率を上げるのは至難の業であるように思える。
しかし、石破首相登場の意味を再確認すれば、実は、それほど難しいことではないということに気づくはずだ。
石破氏が自民党総裁になれたのは、国民人気が高かったからだ。
そして、今回総裁選勝利の原動力となった国民人気の理由は何かといえば、石破氏が一貫して安倍晋三元首相の政治を否定してきたからに他ならない。
今回の総裁選の前には、アベノミクスが実は失敗だったことがようやく国民に理解され、旧統一教会や裏金に代表される自民党の腐敗の根本原因は安倍元首相と旧安倍派にあったことも暴露された。それらを全部否定して、新しい政治を切り拓くことができるのは、石破氏しかいないという国民の期待が石破人気につながったのだ。
しかし、総裁になり、首相になった石破氏は、総裁選で言っていたことを次々と覆し、国民の信頼を失った。それにより支持率も下がり衆院選で大敗したわけだ。
このような経緯を振り返れば、国民人気を回復し支持率を戻すのはある意味簡単なことだ。
それは、原点に回帰すること。すなわち、「安倍政治の否定」をわかりやすく示せば良い。
例えば、安倍氏自身あるいは旧安倍派が元凶となった裏金、旧統一教会、モリ・カケ・サクラ(森友学園、加計学園、桜を見る会)などの過去のスキャンダルについて、すべて再検証して、追加の処分と対策を講じることを約束することはとてもわかりやすい方法だろう。