石破茂首相の評価がガタ落ちだ。
自民党総裁選中に述べたことを反故にしたり封印したりしたことが原因だ。
確かに結果だけで見れば、石破氏は「大嘘つき」だという批判もよくわかる。
しかし、石破氏は変節したのではなく、政権の基盤を築くために今は自説を前面に出すことを避けているだけで、環境が整えば、必ず当初掲げた政策の実現に向けて動くはずだという人もいる。
ここでどちらが正しいかを論じるつもりはないが、今回の衆院選の失敗につながった大きな戦略ミスは、石破氏が森山裕幹事長などの党内実力者の意見に逆らうことが許されず、本意ではない早期解散を強要されたことから始まった。さらには、2000万円の「裏公認料」支給という大失策もやはり森山幹事長主導で行われたと言われる。
これほど重大な決定について、石破氏がトップの地位にありながら、その意見が無視されるという事態になっていたことは、極めて深刻だ。
なぜなら、石破氏がどんなに立派な考えの持ち主であっても、自民党にいる限り、自分のやりたいことはできないということになるからだ。
そうだとすると、石破氏は自民党にいる理由はない。
むしろ、どこかの段階で、志を同じくする仲間を集めて自民党を分裂させ、野党議員に働きかけて超党派で政界再編を仕掛けることも視野に今後の政権運営を考えていく方が理にかなうように思える。
しかし、仮にそうした政界再編を仕掛けるにしても、今のように、国民の石破氏に対する積極的支持が大きく下がっている状況では誰もついてこないだろう。
しかも、次の特別国会や来年の通常国会で野党に裏金問題や旧統一教会問題などで新たに出てきた事実をネタに批判を続けられれば、さらに支持率が下がる可能性も十分にある。
仮に大きな勝負に出るとしても、まずは、来年の夏までに、単に政権を維持するだけでなく、少なくとも石破氏個人に対する国民の期待をもう一度高める必要がある。それに成功すれば、自民党議員の間での求心力も再び高まるだろう。
また、与野党を超えた再編を仕掛ける場合にも、国民からの人気で、立憲民主党の野田佳彦代表や国民民主党の玉木雄一郎代表を上回ることができれば、再編の主導権を握れる。