国民民主党への対応は注意が必要
一方、注意すべきは、野党、とりわけ、国民の注目を集めている国民民主の要求への対応だ。自公国の3党で政策協議を行うことで合意しているが、安易に国民民主の要求をのむのは自殺行為になりかねない。
例えば、いわゆる103万円の壁の大幅な引き上げは、恒久的な巨額減税(年間7.6兆円)と同じで、しかも、富裕層ほど大きな恩恵を受ける。インフレと成長で税収が上がるから財源は不要という全く無責任な提案だ。しかも、制度改正に時間がかかるので、給付金に比べると即効性でも劣る。
国民民主の大躍進を見て自民は浮き足立っているようだが、わずか28議席の政党に振り回されるのはおかしなことだ。彼らの無理筋の要求を一つのめば、さらに味を占めて、際限のないばらまき要求に道を開く。
そうした態度は、上述したとおり、野党は無責任な経済政策しかできないのではないかと疑っている良識ある中間層のさらなる離反を招き、石破氏も結局はただのポピュリストだったという声を招く。マスコミも一斉に批判するだろう。
格差対策、弱者対策について、何らかの政策を実施することは大前提だが、それは人気取り政策であってはならない。立憲が提案する給付付き税額控除を含め、より本格的で効果的かつ真の弱者を救うきめ細かい政策を実施するために、与野党が責任ある態度で協議を行うという、これまでの安倍政治には全くなかった政治手法をとれば、これもまた石破カラーを際立たせ、国民の支持を得ることにつながるだろう。
立憲の野田代表は安倍氏を崇拝しているようだが、一方で石破氏に一目置く姿勢も見せている点で、国民民主の玉木代表とは全く違う。
石破首相が野田氏とオープンで真摯な態度で協議すれば、その過程で、国民民主の一連の政策がいかに無責任なものかが国民の前で明らかにされることになるはずだ。
ちなみに、10月28日と29日に行われた共同通信による世論調査によれば、石破首相が辞任すべきだとの回答は28.6%にとどまり、辞任は不要が65.7%に上っている。石破内閣の支持率が32.1%であるのと合わせて考えれば、今のままの石破氏は支持できないが、なんとかして初心に帰って頑張ってほしいという国民がかなりいるのではないかということが推測される。
さらに、望ましい政権の枠組みについての質問では、「政界再編による新たな枠組み」が31.5%と最多だった。「立憲民主党を中心とした多くの野党による政権」は24.6%。「自公に日本維新の会などを加えた政権」が19.3%、自公の少数与党政権は18.1%で最少となった。
国民の現在の与野党に対する不満は限界点を超え、政界再編まで求める段階に入った。
しかも、今もなお、石破氏の復活を期待する層はかなり大きいと見ることができる。
自民内の右翼守旧派と袂を分かち、場合によっては、自民を割って、政界再編の道を選ぶことも辞さず、という構えで進めば、石破氏の活路は拓けてくるかもしれない。
石破氏の「原点回帰」を目指す覚悟が問われている。