上智大学文学部新聞学科4年の田地野和哉さん(23)は、編入試験を経て20年4月に入学した途端、全面オンライン授業を経験。自室のベッドに寝転んで授業を聞き流す毎日で、「1年間は腐っていた」と振り返る。 そこから抜け出せたのは、論文を書いてみて学ぶ楽しさに改めて気付いたこと、そして、短期間だけ通学できた21年秋学期に同じ授業を受けていたつながりなどから4人の友人ができたことだった。「情報網もメンタルも支え合って、就職活動も乗り越えられました」と仲間に感謝する。
各大学はオンライン授業のデメリットを克服しようと、学生へのアンケートを通して授業への満足度や改善点などを聞き取り、授業改革へとつなげてきた。
キャンパスの価値とは「空間の力」
オンライン授業を自室で1人で受講するのではなく、大学に来て友達と受けるという一見新しい行動も、キャンパスの普遍的な価値に裏付けされたものだ。
「1人で作業するのにカフェに行ったり、YouTubeで勉強風景を流しながら机に向かったりしますよね。モチベーションを上げたり雰囲気をつくったり、人の気配がある空間には力がある。学生たちはキャンパスの中にそれぞれお気に入りの場所を持っています。安全で自由な場所に体をゆだね、大学ならではの創造的な時間を教員や仲間と過ごすことが、その人本位の学びに繋がると考えています」(松原副学長)
同大学では、キャンパス周辺の感染者数の動きや政府・自治体からの制限要請などから、独自の判断基準を設け、授業や部活動などで必要な制限をあらかじめ示している。対面授業を主軸に据える一方で、いつでも視聴できるフルオンデマンド形式の授業を教養科目で導入するなど、「オンラインの良さも活用しながら大学の在り方を模索していく」と松原副学長は今後の展望を語る。
コロナが浮き彫りにした、学生の価値観と大学の存在意義。学生も大学もwithコロナへ歩み始めている。(AERA dot.編集部・金城珠代)
※この記事はAERA dot.とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。