官公庁と民間企業の間を人材が流動的に行き来する「リボルビングドア」。新しいキャリアの磨き方として注目される背景には何があるのか。AERA 2024年10月28日号より。
【写真】「官民の越境転職支援に特化したサービスを行う「VOLVE」の社長」はこちら
* * *
「リボルビングドア」とは、リボルビングドア=回転ドアを通るように、人材が官公庁と民間を自由に出入りする状態を指す。この仕組みが浸透している国としてまず浮かぶのは米国だ。米国では政権交代のたび、大統領の裁量で多くの上級公務員が選ばれ、数千人単位で職員が入れ替わる。政府と民間の研究機関などとの間でのリボルビングドアは人脈の構築や収入増にもつながり、有効なキャリアステップと位置づけられている。
近年は日本でも官民の越境人材が注目を浴びつつある。
官民の越境転職支援に特化したサービスを行う「VOLVE」(東京都千代田区)を2022年に起業した吉井弘和社長(43)もリボルビングドアの実践者だ。
東京大学を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社とドイツ支社で勤務。ヘルスケア企業や中央省庁のコンサル業務などを担当したキャリアを買われ、マッキンゼー離職後の17年から厚生労働省所管の特別民間法人「社会保険診療報酬支払基金」の理事長特任補佐に就任。その後、20年から2年余、厚労省保険局保険課の課長補佐を務めた。
吉井さんは「新卒でマッキンゼーに入った頃から、いずれは公共セクターで働きたいと考えていました」と打ち明ける。
他人とは違うキャリア
東大生の就職先として近年、官僚離れが顕在化する一方、常に上位にランキングされているのが、マッキンゼーを含む外資系コンサルだ。とはいえ、民から官を志向するタイプは珍しいのではないか。そう問うと、吉井さんは頷きながらこう答えた。
「20年前であれば、官から民への転職はあってもその逆はまれだったと思います。でも私の場合、他人とは違うキャリアの価値提案もいいかなと考え、先に民間企業を選びました。これからはこういうキャリア選択もどんどん増えるはずです」