VOLVE社長 吉井弘和さん(43)(よしい・ひろかず)/東京大学卒業後、マッキンゼーに就職。在職中にコロンビア大学とロンドン大学に留学。厚労省保険課課長補佐等を経て、2022年起業。慶應大学総合政策学部准教授(写真:本人提供)

 学生時代から官僚の仕事に興味があった。だが、社会人としてのファーストステップはあえてコンサル会社を選んだ。その理由はこうだ。

 コンサル会社は短期間で汎用的な問題解決スキルが備わりやすいと考えたのが一つ。実務で必須の英語力も数年で飛躍的に磨かれたという。二つ目が人脈。マッキンゼー出身者のネットワークは世界中に広がっている。三つ目はリスク回避だ。

「官の世界へ転身して万一なじめなかった場合も、コンサル会社で一人前と認められるほどの職業スキルを身に付けておけば、再び民間に戻っても受け皿はあるだろう、と考えました」

 今の世の中の流れを見れば、リボルビングドアは必然的に広がっていく、と吉井さんは考えている。若い世代の職業観として、転職を経験する中で自分のキャリアを磨きたいという志向が強まっているためだ。中でも官民の越境転職は、キャリアの幅を広げる上で貴重な経験値になる、と吉井さんは強調する。

「私自身、官民の両サイドを経験し、片方で育ちづらかったスキルを、もう片方で大いに活用できた経験は、仕事のやりがいに直結する強い手応えを感じられました」

手触り感のある仕事に

 官庁とコンサルで育ちやすいスキルは違う。ただ、それぞれで培ったスキルは越境した先の環境が異質であるがゆえに、「生かされやすい」ことを実感したという。

 具体的には、マッキンゼーで培ったビジネスの問題解決スキルは役所では得難いが、そのスキルは官庁での勤務で役立った。また逆に、利害が反する関係者の間で合意形成を図る調整力は官庁でこそ身に付けられるスキルであり、それは民間でも十分に応用可能な能力だと実感した、と吉井さんは言う。

「VOLVE」が取り組む柱の一つは、民から官への転職のハードルを下げること。転職の際、最も気になるのが今よりも年収が上がるのか、下がるのかだ。しかし官僚の場合、入省年次に基づいて等級・号俸が変わっていくのがほとんどだが、それは明文化されていないため、外部からは分かりにくい。そこで吉井さんは、実際に中央官庁で働いた相場観を基に独自の年収シミュレーターを作った。

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「VOLVE」は官僚の民間転職も支援している