そして決断ができないのは、石破首相の党内基盤が盤石なものではないからだろう。党首討論などで野党に攻撃された時に石破首相が見せる苦渋の表情には、自分の力ではどうしようもない事情があることが伺える。

 もうひとつの原因は、“一強多弱”に長年甘んじてきた自民党自体に存在する。

 2012年に民主党から政権を奪還して以来、自民党は同年12月の衆院選で480議席中294議席、14年12月の衆院選で291議席、17年10月の衆院選で284議席、21年10月の衆院選で261議席を獲得し、いずれも単独過半数を維持してきた。その背景にあったのは故・安倍晋三元首相の存在で、「岩盤支持層」と言われる保守層の支持をがっちりと掴んでいた。

 なお21年の衆院選で自民党は21議席を減少させたが、当時の自民党の顔は安倍元首相ではなく、岸田文雄前首相だったことに留意する必要がある。要するに自民党は「安倍ブランド」を掲げることでその勢力を伸ばし、維持してきたのではなかったか。

盗撮、パパ活、裏金逮捕…「魔の〇回生」

 そして安倍一強政治は「魔の〇回生」をも誕生させた。「魔の2回生」としては、未公開株取引による金銭トラブルを週刊誌で暴露された武藤貴也氏や、複数の女性スキャンダルが報じられた中川俊直氏、秘書への暴言などが暴露された豊田真由子氏や知人女性への準強制性交・盗撮が発覚した田畑毅氏などがいる。

 最近でも“パパ活”が報じられた吉川赳氏、洋上発電の会社から不透明な政治資金を受け取ったとして逮捕された秋本真利氏や巨額な裏金をため込んでいた堀井学氏、池田佳隆氏などの「魔の4回生」がいて、名前を挙げればきりがない。

 こうした「安倍チルドレン」とも呼ばれる彼らが05年に誕生した83人の「小泉チルドレン」と異なるのは、小泉チルドレンがすぐさま09年の政権交代選挙で選挙の厳しさの洗礼を受けたが、安倍チルドレンの多くは14年、17年と順風選挙で当選を重ね、21年の衆院選でも立候補した71人のうち67人がバッヂを付けている。なかには総裁選に出馬した小林鷹之元経済安全保障担当相といった逸材も存在するが、「そもそも野党時代の自民党には、“新規参入”が難しくなかった。とんでもない輩も混じっていた」(永田町関係者)といった評価が一般だ。

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安倍政権で見捨てられた人を救うことだった