エミー賞にアジアの風
立田さんによると2019年まで長くエミー賞を席巻していたのは中世ヨーロッパをベースにしたファンタジーにして国盗り物語の「ゲーム・オブ・スローンズ」だった。その流れを変えたのが21年の韓国発ドラマ「イカゲーム」(Netflix)。英語字幕ながら大ヒットし、22年には主演のイ・ジョンジェにアジア人初のエミー賞主演男優賞(ドラマ部門)をもたらした。配信作品の増加にも関係があるという。
「配信では字幕や吹き替えを自分で選択できます。20年にアカデミー賞作品賞を受賞した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』や『イカゲーム』のヒットで『英語を話さなくても字幕でOKなんだ!』という空気ができあがった。そこにハマったのが『SHOGUN 将軍』。過激な戦闘描写もあり、『これは日本版のゲーム・オブ・スローンズだ!』と話題になったのではないでしょうか」
前出の穂志さんは本作をきっかけに米エージェントとの契約が決まったという。
「自分はまだまだですが確かに『扉が開いた』感覚はあります」
一人の俳優の信念は確実に後進に大きく道を開いた。
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2024年9月30日号