エミー賞史上最多18冠に輝いたドラマ「SHOGUN 将軍」。本作でプロデューサーを務め、主演した真田広之の功労を、出演者らが語った。 AERA2024年9月30日号より。
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プレゼンターのスティーヴン・ユァンが「ヒロユキ・サナダ」と呼んだとき、真田広之氏(63)の口元はかみしめるように「OK」と動いたように見えた。
日本時間16日、米テレビ界最高の栄誉とされるエミー賞の授賞式が行われ、ドラマ「SHOGUN 将軍」が作品賞をはじめ18部門を受賞。真田氏は日本人俳優初となる主演男優賞(ドラマ部門)に輝いた。
「敬意を持った出合い」
「SHOGUN 将軍」はディズニープラスによるオリジナル配信ドラマだ。天下分け目の合戦を前にした戦国武将・吉井虎永(真田)の戦いを描く。授賞式に参加した藤役の穂志もえかさん(29)は熱狂を振り返る。
「真田さんの名前が呼ばれた瞬間、クルーもキャストもみんな泣いてハグをし合いました。本当に全員が家族のような現場で、常にその中心にいてくれたのが真田さんだったんです」
キャストの多くが日本人、かつ7割が日本語で展開する本作が海外で評価された背景にはなにより真田氏の功労がある。2003年に映画「ラストサムライ」でハリウッドに進出、その後も海外を拠点に精力的に作品に出演。本作ではプロデューサーを兼務した。穂志さんは言う。
「真田さんは出番以外でも常に現場にいらして、役者だけでなく参加している日本人スタッフにも常に気を配り、現場が穏やかに収まるように日米の架け橋をしてくださっていました」
本作で真田氏がこだわったのは「オーセンティック=本物であること」だ。映画ジャーナリストの立田敦子さんは言う。
「真田さんは所作や刀の使い方、話し方、日本人が観てもおかしくない時代劇にするために多大な尽力をした。加えて日本では予算的に不可能な美術や衣装のクオリティーや豪華さは際立っています。ただし本作はあくまでも日本発ではなくハリウッド製作のコンテンツ。海外目線を持ったうえで『正統な日本』にこだわった点が、ここまで高い評価を得た理由だと思います」
真田氏が受賞スピーチで語った「東洋と西洋の敬意を持った出合い」がまさに結実したのだ。