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 学生の親に対して、企業が内定や入社の確認をする「オヤカク」。その段階で「親の介入」による思わぬトラブルが起きている。AERA 2024年9月16日号より。

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「学生本人が入社を希望していても、親が内定先企業に何かしらの不満を持っているとさまざまなトラブルが起きることがあります」

 こう話すのは、採用支援に関する人材サービスを行う「ネオキャリア」(東京都新宿区)の中村陽太郎事業部長だ。

 同社によると、幅広く企業を支援する中で実際にあった「オヤカク」段階でのトラブルの例として、「親が自社製品を嫌っている」との理由で内定を辞退した学生や、親から「就職人気企業ランキングに入っていない企業は認められない」と言われて内定受諾をためらう学生がいたという。

内定・入社後に介入

 内定後や入社後に親が介入してくるケースもある。

 内定を出した後に一人暮らしを親に認めてもらえないと訴える学生、内定後に「倒産の心配はないか」と問い合わせの電話を入れてくる親、入社後に「こんな遅くまで働かせるのはおかしい」と会社にクレームをつけに来る親もいた。

 ほかにも、「本来郵送で返送されるはずの内定承諾書を親が成績証明書と一緒に持って来社してきたために応対をすることになった」ケースや、「入社から3カ月後に配属先の上司に相談もなく、社長室宛てに退職届が郵送されてきたため確認の電話を入れると親が対応し、そのまま退職の手続きはすべて親が行った」ケースもあったという。

 子どもの就職に親が関与したがる背景には何があるのか。中村さんはこう指摘する。

「少子化で一人っ子も多いため子どもの教育や将来に関心の高い親が多くなったり、学生の母親が現役で働いている、もしくは以前にバリバリ働いていた経験を持つ人もいたりするため、企業や業界・職種に詳しいことも関係しているのではないでしょうか」

 就職活動中の学生の相談相手として、父親よりも母親が多い傾向は同社の過去の調査でも浮かんでいる。教育熱心な親ほど、子どもの就職活動にも熱が入る傾向があり、学校選びと同じ感覚で合同企業説明会に参加する親もいる。子どもから相談を受けなくてもインターネットで子どもが受験している企業を調べたり、職場で受験企業の悪い噂を聞くと、子どもが内定をもらっても反対をしたりする親もいるという。中村さんはこう強調する。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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