「飛びすぎるバット」にはメリットどデメリットの両面ある。写真はイメージ(GettyImages)

規制をかけていい時期ではないか

 越谷市は町を野球で盛り上げようと、関係者らが「野球の街越谷」を立ち上げ、野球教室やなどのイベントを通じて競技人口を増やす取り組みを続けている。

 会長で同市立大相模中学野球部顧問の長瀬翼教諭は、自らも球児として土を踏んだ甲子園の「飛ばない」光景に衝撃を受けたという。

 長瀬さんは、「遠くに飛ばせることで、軟式野球が面白くなったのは事実」と複合バットがプラスに働いた面を認めつつも、その使用に規制をかける必要性にも言及する。

高校野球のバットが飛ばなくなり、大学、社会人、プロは木のバットを使います。その生徒がどこに目標を置くかですが、この先に向けて最短距離で育成するということを考えると、飛ぶバットは明らかに目的から外れていると思います。あくまで個人的な意見ですが、規制をかけていい時期ではないかと考えています」(長瀬さん)

 ただ、長瀬さんのチームでは、当面は生徒がどのバットを使うかは、これまで同様に個人の自由とする方針だという。

「バット以前に、野球選手は『体が正義』ですから、高校でも通用する体づくりを、栄養面なども含めて教えていきたいと思います」(長瀬さん)

 全日本軟式野球連盟では昨秋、25年から、学童野球の試合で一般用の複合バット、つまり「大人の複合バット」の使用を禁止することを決め、ホームページに掲載した。中学はこれまで通り自由だが、

「安全面、技術向上などさまざまな面から今後も検討していく」(担当者) という。

 小6の長男が学童野球に入っているある母親からは、こんな意見も出た。

「長男が4万円のバットが欲しいって言い出した時、『ついに来たか』と思いました。もちろん買ってあげたし、本人が喜んで使っている姿を見ると、親としてもうれしい気持ちはあります。ただ、5歳の次男もチームに入りたがっていて、上級生になる頃にバットは一体何万円になっているのかと思うと、前向きな気持ちにはなれないですよね」

 一昔前を考えれば夢のような高性能バットだが、技術面でも財布の面でも「お金で飛距離を買う」流れは、限界にきているのかもしれない。

(國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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