少年野球では「飛びすぎるバット」が主流となっている。画像はイメージ(GettyImages)
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 今夏の甲子園は大会通じてホームランが7本しか出ず、「飛ばないバット」が話題になった。その一方、学童野球や中学の軟式野球部では、高反発の「飛びすぎるバット」が主流になっており、技術の向上という点で疑問視する声が出ている。さらに高いもので5万円もすることから、親の経済的負担の問題もある。一部のバットの使用を規制する動きも出始めたが、少年軟式の現場の指導者や親たちは、高校との“ギャップ”をどう考えているのだろうか。

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 学童野球や中学校の野球部は、長く金属バットが主流だった。

 それに替わる「複合バット」と呼ばれる“飛ぶバット”が登場したのは2002年のこと。バットの打球部にウレタン素材を使用して反発係数を高めたミズノの「ビヨンドマックス」が、飛ぶバットのパイオニアとして登場した。

 長打や本塁打が打ちやすい方が打者は面白い。子どもたちにも一躍人気になり、その後、複数のメーカーが同様の飛ぶバットを開発している。

 だが、反発係数をさらに高めた新製品が登場するにつれ、現場の指導者たちからは「いくらなんでも簡単に飛びすぎる」と、技術向上への弊害を指摘する意見や、1本が約4~5万円もするバットも登場し、親からは経済的負担を嘆く声も出ていた。

 ちなみに、軟式用バットは主に「小学生用」と「一般用」に分かれて販売されている。規格の基準はないものの一般用の方が数センチ長く、100グラムほど重いため、一般用の方がよく飛ぶ。

 体の大きい小学生は、この「大人の複合バット」を使いこなし、本塁打や長打を量産する時代になっている。

 一方で、今夏の甲子園では春の選抜大会から導入された「飛ばないバット」が話題になった。京都国際高校がチーム本塁打ゼロで優勝を果たし、大会本塁打は7本で、前年の23本より大幅に減った。

 野球のあり方が変わったかのような高校の状況に対し、「飛びすぎ」が横行している少年軟式。指導者はなんらかの対応や自主規制などを考えているのか。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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指導者は「高校に入ってから苦労します」