「こすった」打球がホームランに
「小学生にはがんがんバットを振って、しっかりと振り切る力を身に付けてほしいと考えて教えています。高校野球のバットが飛ばなくなったとはいえ、われわれが教える基本姿勢は変わらないと思っています」
こう話すのは、小学生の甲子園と呼ばれる「高円宮杯 第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に今夏、初出場を果たした山野ガッツ(埼玉県越谷市)を長く指導する鍋島匡太郎さん。
道具に左右されるのではなく、何に重きを置いて指導するかが大事だというスタンスだ。
だが、鍋島さんも「飛びすぎ」の現状には強く疑問を投げかける。
「複合バット自体が飛びすぎなのですが、その中でも『大人の複合バット』はどう考えてもダメだと思います。極端に言えば、小学生でもバットを短く持って当てればいいだけ。右打者の場合、振り遅れてこすった打球が、ライトへのホームランになってしまうんです。投手だってかわいそうですよ」
鍋島さんによると、試合中に相手打者が使っているバットを見て、「バッター〇〇(製品名)!」などと声を出し、「大人の複合バット」の場合、外野手の守備位置を下げさせるのだという。
鍋島さんは「ホームランが打てると楽しいという気持ちはよくわかる」と前置きしつつ、こう指摘する。
「当てるだけで飛ぶことに慣れてしまったら、高校に入ってから苦労します。長打力に自信を持っていたのに、なんで飛ばないのか……と意味のない挫折感を味わってしまうと思います」
現在出回っている少年用の複合バットが「ぎりぎりの許容ライン」で、これ以上飛ぶバットは必要ないという考えだ。
とはいえ、どのバットにも親が大きなお金をかけている。「そのバットは使わないでください、なんてとてもじゃないけど言えません」と苦笑いもする。