中日・木下拓哉
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 野球の世界でプロとアマチュアのレベル差が最も大きいと言われるのが捕手である。プロになると受ける投手、対戦する打者の数はアマチュアとは比べ物にならないほど多くなり、それらに対応することの負担から、打撃まで手が回らなくなるという例も少なくない。また一度レギュラーが定着すれば長いが、抜けた穴を埋めるのも簡単ではないポジションである。そんな捕手が弱点となっている球団はどこになるのだろうか。

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 セ・リーグでまず挙がるのが中日だ。2020年以降は木下拓哉がレギュラーとして活躍してきたが、昨年は怪我もあって成績を落とすと、今年も攻守ともに精彩を欠いた状況が続いているのだ。ちなみに8月28日終了時点の木下の盗塁阻止率は.111と、規定試合数に到達した選手の中では両リーグで最低の数字となっている。木下に次いで多く先発出場している加藤匠馬も持ち味である肩の強さは見せているものの、打率は1割台と打撃が課題の状態が続いている。

 3番手捕手の宇佐見真吾まで含めて全員が30歳を超えており、ここから急成長を望むのは難しい状況だ。若手では石橋康太が正捕手候補となるが、怪我が多く、なかなか一軍に定着することができていない。ここ数年のドラフトで味谷大誠、山浅龍之介、日渡騰輝(育成)と若い捕手を獲得はしているものの、まだまだ一軍の戦力になれるかは未知数である。他のポジションも補強ポイントは多いが、捕手も力のある選手が欲しいところだ。

 セ・リーグでは阪神も不安が大きい。昨年までは坂本誠志郎、梅野隆太郎の2人が主にマスクをかぶってきたが、今年は揃って低迷。打撃だけでなく、守備でも精彩を欠く場面が増えている。また坂本については今年国内フリーエージェント(FA)権を取得。権利の行使については明言していないものの、昨年の活躍もあって他球団の評価を聞いてみたいという思いが出てきても不思議ではないだろう。若手では高卒3年目の中川勇斗が楽しみな存在だが、全体的に層が薄い印象は否めない。昨年も捕手は補強ポイントにあがりながらドラフトで指名はなかっただけに、今年は獲得に動くことも十分に考えられるだろう。

 パ・リーグでまず捕手が弱点のチームとして挙がるのが西武だ。今年は3年目の古賀悠斗が正捕手に定着し、3割以上の盗塁阻止率をマークするなど成長を見せているが、まだまだ太い柱と言えるほどの安心感はない。古賀に続くのが大ベテランの炭谷銀仁朗で、二軍まで含めて見ても、次の一軍戦力となれる若手はなかなかいないのが現状である。チームは歴史的な貧打に苦しみ、野手は全体的に底上げが必要な状況だが、捕手についても補強を検討すべきだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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