安野貴博さん(33)(あんの・たかひろ)/1990年生まれ。「テクノロジーで誰も取り残さない東京へ」を掲げ2024年東京都知事選に出馬。SF作家、起業家、AIエンジニア。近著に『松岡まどか、起業します』(撮影/写真映像部・和仁貢介)
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 7月の都知事選で「AIあんの」の導入など、新しい選挙を印象付けたSF作家・起業家・AIエンジニアの安野貴博さん。そうした姿勢を形作った言葉がある。安野さんの人生に寄り添う三つの言葉とは──。AERA 2024年9月2日号より。

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 政治経験なし、無所属でありながら7月の東京都知事選に立候補した安野貴博さん。「デジタル民主主義」を掲げた斬新な選挙戦は注目を集め、大きな話題を呼んだ。100ページ超のマニフェストを学習した「AIあんの」が質問や疑問を受け付けたり、意見を議論する場をデジタル空間に構築したり、その内容をマニフェストに反映したり。選挙期間中にマニフェストを80回近くアップデートしたことも、新しい選挙を印象付けた。

 そんな安野さんの姿勢を形作った言葉が、

「百聞は一見に如かず」

 中国の『漢書・趙充国伝』に記された、誰もが一度は耳にしているであろう有名な故事成語の一つだ。安野さんは大学を休学してサンフランシスコで長期インターンをしていたときに、その意味を強く実感したという。

「今や誰もがグーグル検索を使っていますが、その概念がないときに『一日に何回も検索したくなるものなの?』と聞かれても、相手が納得できる説明をするのは難しい。でも、実際に使ってみるとその良さがすぐにわかるんです。スタートアップではスライドを何枚も作って説明するよりも、エンジニアが作ったプロトタイプを見せるのが世界を変える一番の近道だという考え方をします。その考えに出合ってから、人に何かを伝えたり、説得したりしたいときは実際にデモンストレーションすることを大切にしています」

オードリー・タンの影響

 昨年5月には、AIについて岸田文雄首相と意見交換をする機会があった。リスクとポテンシャルの両方を説明してほしいと要望されたが、このとき与えられた時間は3分。限られた時間でどう伝えるか迷った末に、「一度見せる」ことにした。

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百聞は一見に如かず