AERA 2024年8月26日号より

男性の「生きづらさ」

 関西大学の多賀太教授(家族社会学)は、こうした状況を「夫のモヤモヤ、妻のイライラ」として、男性稼ぎ手社会が引き起こす労働慣行の歪みを是正し、ジェンダー平等に向けた働き方改革の必要性を提唱する。

 23年版の男女共同参画白書は、「男は仕事」「女は家庭」の「昭和モデル」から、全ての人が希望に応じ、家庭や仕事で活躍できる「令和モデル」に切り替える時だとして、性別役割分業を前提とした長時間労働などの慣行を見直すよう訴えた。

 男女共同参画社会の実現に向け、女性は十分に役割を果たしてきたものの、いまだ実現に至っていないのは、男性が他人事として受け止めているためだ。もはや変わるべきは男性であり、企業だろう。男性の意識を変えるのは容易ではないが、収入逆転や早期退職、育児や病気介護などに伴うキャリア中断など、価値観が変わる可能性があるきっかけは少なくない。

他人事ではなく自分事

 男性は社会的規範への忠誠を求められ、束縛される。長時間労働と相まって、どことなく生きづらさを抱える。そんな男性のあおりを受け、女性にもストレスが直撃し、生きづらさに直面する。男女ともに生きづらさを抱く底流には、この側面があると考えている。

 夫婦は、いわば合わせ鏡のようなものだ。どちらかが心身のバランスを崩すと、もう片方のバランスにも影響を与える。仕事や家事・育児についても同じことが言える。

 男らしさやメインとしての稼ぎ手意識から自らを解放した時、男はラクになるし、不平等な両立を強いられている女もラクになる。要は、男女ともラクになるのではないだろうか。ジェンダー不平等が解消に向かい、男女共同参画社会が訪れたとき、女性だけでなく、男性にもメリットがあると強調したい。

 男性たちはまず家庭内にジェンダー不平等が存在していることを自認し、他人事ではなく、自分事として捉え直すことから、全てが始まる。

(ジャーナリスト・小西一禎)

AERA 2024年8月26日号より抜粋

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