試合後、目を潤ませながら長い沈黙を続けていた野々村監督は、報道陣からコメントを促されると、「今日は日本中に恥をかきました」の第一声のあと、「21世紀枠の出場校に負けるのは末代までの恥。こんな試合にしかならないのは、自分の能力がないということ。もう野球を辞めたいし、死にたい。腹を切りたい」と口にしてしまう。

 高野連は発言を問題視し、世間も「前代未聞の暴言」と非難した。さらに高野連に謝罪に出向いた際の銀色のスーツに派手なネクタイという場違いな出で立ちもバッシングを受け、3月25日、世間を騒がせた責任を取る形で監督を辞任した。

 復帰が叶わない場合は、定年まで1年を残して学校も退職するつもりだったが、その後、向陽の地元・和歌山県の2000人を含む8000人もの復帰嘆願署名が全国から届き、11年3月に正式復帰。同年夏、1年半ぶりの甲子園で、柳井学園を5対0で破り、「まさか甲子園に戻ってこられるとは……」と感無量の面持ちだった。
 
“ヤクザ監督”の異名をとった名物監督は、11年夏の組み合わせ抽選会では、銀色の羽織に金色の足袋、雪駄という粋な着流し姿も披露している。(文・久保田龍雄)

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