内野の守備練習をする岡本

打線重視のチーム事情で左翼守備へ

 民放テレビ関係者が解説する。

「チームは春先から貧打が長引き、打線全体のテコ入れが必要でした。ポイントは岡本の後を打つ5番打者。ここが固定できないので岡本との勝負が避けられて得点が入らない。そこで阿部慎之助監督は、岸田行倫の台頭で出場機会を減らしていた捕手の大城卓三を『5番・一塁』に抜擢したところ、この用兵が的中し、チームが上昇気流に乗りました。坂本がファームでの調整を経て1軍に復帰すると再び三塁に入り、大城が一塁を守るため、岡本は左翼に回った。理想は1つのポジションに固定したいですが、チーム状況を考えるとできなかったのが実情です」

 岡本は昨年も左翼で6試合スタメン出場したが、今年は早くも10試合守っている。試合終盤には大城がベンチに下がり、岡本が左翼から一塁に回ることもある。

 現役時代に内外野を守った球界OBは岡本にかかる守備の負担を懸念する。

「守備位置を固定してくれたほうが、体力的にも精神的にも楽なのは間違いありません。岡本選手は一塁と三塁の両方をこなしますが、2つのポジションでは筋肉の張り方が違ってくる。外野を守るようになるとさらに負担が増します。外野は内野と違って、打者から遠いので集中力の入れ方が変わってきます。外野でスタメン出場した次の日に内野を守ると、どっと疲れる。毎日守るポジションが変わることで想像以上に体力を消耗しますし、打撃に及ぼす影響がゼロではないと思います。あと、岡本は外野では決してうまい部類には入らない。守備範囲が広いと言えず、最善の起用法なのか判断が非常に難しい」

 強打者が複数ポジションを守る采配で浮かぶのは、阪神の矢野燿大・元監督だ。佐藤輝明は右翼、三塁を守り、大山悠輔も一塁、三塁、左翼、右翼と4つのポジションでスタメン起用された。昨年から就任した岡田彰布監督はこの起用法にメスを入れた。佐藤を三塁、大山を一塁で完全に固定。佐藤に守備でミスが重なり、「外野の方が良いのでは」という声が外部から上がった時も、守備位置を変えることはなかった。

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