中京大中京時代の高橋

春・夏とも「甲子園」はコロナ禍で中止

 高校時代から「世代№1投手」として評価は高かった。中京大中京で2年からエースとなり秋の明治神宮大会で優勝。だが、春のセンバツ、高3の夏の甲子園は新型コロナウイルス禍のため中止。愛知県の独自大会では最高球速154 キロを計測して優勝を飾り、甲子園交流試合でも智弁学園に勝利。19年秋から20年まで公式戦無敗の28連勝で卒業している。

 高橋宏を高く評価し、高1から熱心に視察していたという他球団のスカウトが言う。

「球の速さ、制球力、変化球の精度とすべて高校生離れしていて、間違いなくエースになる素材だと思いました。世間でそこまで騒がれなかったのは、コロナの影響で甲子園が開催されなかったからでしょう。例年通り開催されていたら、春夏連覇をしても不思議ではなかった」

 高橋宏は高校卒業後には慶大への進学希望を公言していた。だが、慶大環境情報学部のAO入試を受けて不合格になり、進路変更でプロ志望届を出したことで運命が大きく変わる。

 アマチュア担当のスポーツ紙記者が振り返る。

「2020年のドラフトで、中日は愛知県出身でトヨタ自動車の即戦力右腕・栗林良吏の指名が有力視されていました。でも、同じく愛知県出身の高橋宏斗が大学進学から急転プロ志望を出したことで1位指名した。単独指名で、中日入りしました」

 急な進路変更とはいえ、なぜ高校№1投手が単独指名となったのか。

20年ドラフトは大学・社会人の当たり年

 先のスポーツ紙記者が言う。

「この年のドラフトは大学・社会人の大豊作と言われ、近大の佐藤輝明、早大の早川隆久に4球団が1位指名で競合しました。佐藤は阪神、早川は楽天に入団し、いずれも即戦力となった。中日が指名すると思われていた栗林も広島に1位で単独指名され、1年目から守護神として大活躍しています」

 20年のドラフトはたしかに大学・社会人の即戦力候補が多く、ほかにも1位で伊藤大海(日本ハム)、木沢尚文(ヤクルト)、2位以下でも牧秀悟(DeNA)、山崎伊織(巨人)、伊藤将司、村上頌樹、中野拓夢、石井大智(いずれも阪神)、矢野雅哉(広島)と、後の主力選手たちが入団している。

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他球団スカウトが今の活躍を見て心境の変化が…