「0%じゃないなら可能性はある」と妄信して宝くじを買いすぎたり、「夫(妻)より私の方が家事をしている」と感じたりしていませんか。そんな不合理な行動やその原因となる思考の偏りを明らかにしてくれるのが「行動経済学」。これを知っておくことで、より良い暮らしを実現できるかもしれません。
【漫画】「夫(妻)より私の方が家事をしている」と感じてない?
『ざっくりわかる8コマ行動経済学』(著:橋本 之克/漫画:まずりん)では、日常生活の様々な場面で判断を間違えないために知っておきたい行動経済学を、8コマ漫画でざっくりゆる〜く解説。ここでは、「確実性効果」や「利用可能性ヒューリスティック」などに関する部分を引用しつつ紹介します。
宝くじが当たりそうな気がするのは?
東海道新幹線が1年間に運行される本数は約13万本ですが、遅延時間の平均はわずか1.1分だそうです(JR 東海の2023年アニュアルレポートより)。これは自然災害による大幅な遅延も含む年間平均なので、平常時はほぼ時間通りだと考えてよいでしょう。全般に日本の鉄道は外国と比較して、ほとんど遅れることがないと言われています。その理由の一つに、不確実さを嫌う日本人の国民性があるかもしれません。
この傾向は、オランダの社会心理学者ヘルト・ホフステッドが文化・国民性の違いを定量化した「ホフステッド指数」でも示されています。世界40 カ国の「不確実性を避けようとする傾向」を比較すると日本は、ギリシャ、ポルトガル、ベルギーに次ぐ高い数値になっています。
ただし度合いの差はあっても、確実さを好み、不確実さを嫌うのは万国共通です。この傾向を行動経済学では「確実性効果」と呼びます。人は、何かが起きる確率が100%や0%であることを重視するのです。その一方で、高い確率でも100%に届かなければ実際より低く感じます。例えば手術を受ける際、執刀する医師の一人は成功確率が100%、もう一人は99%ならば、絶対に失敗しない100%の医師に執刀してほしいと思うでしょう。
「確実性効果」が働くと、0%より少しでも高い確率は、その数字以上に高く感じます。典型例は宝くじです。2023年の年末ジャンボ宝くじでは、1等が当たる確率は2000万分の1、つまり0.000005%でした。この確率は、10キロのお米40袋から米1粒を見つけるのと同じくらい低いものです。これほどに低い数字でも、0%ではないというだけで実際以上に当選の可能性が高いと感じるのです。「買わなければ当たらない」と言って宝くじを買う人がいます。その言葉はウソではないのですが、だからと言って買えば当たるとは限りません。物事が起きる確率を冷静に判断することは大切なのです。