綱川明美さん(撮影/写真映像部・松永卓也)

 無理だったら、「これ、いまちょっとキツいです」と言えばよく、そこから「じゃあどうすれば目的に達することができるか」話をします。もちろん自走できるスタッフを雇っていても、会社として足りないところはたくさんあります。

 ――イライラはしませんか。

 綱川:問題が起きるのは組織に仕組みがないからであって、個人が悪いわけではないから、イライラはしません。その仕組みを作るのは私の仕事ですので、整っていなくて申し訳なくは思います。さらに言えば、自分の仕組み化能力が足りない場合、他の人にお願いをするだけ。そもそも何か問題が起きたときに、会社の存続を揺るがすようなレベルかというと、たいていはそうではない。会社全体に対するインパクトでは数パーセント以内のこと。それに自分の脳みその9割を使うのは間違っている、と考えます。

 ――最後に、人生やキャリアを考えるうえで、役立つようなおススメの本を教えてください。

 綱川:結論からいうと、おススメの本はないです。正確には、私が良かったと思った本が、他の人に参考になるとは思えないから。私がある本を読んでためになったというのは、その本を読んだ時のシチュエーションやタイミングがあってこそ役に立ったんだと思うのですが、それをすべて他の人が再現できるでしょうか。基本的に他人が言ったことをそのまま信じてはいけないのですよ。

 その上で、1冊紹介するとすれば……絵本ですね。『ちいさいおうち』(作・絵/ バージニア・リー・バートン、訳/ 石井 桃子、岩波書店)です。これ、深い絵本なのです。

 自然豊かなすてき山の上におうちが建てられた。その後、家の前に道路ができて、馬車が通るようになり、電車や車が通るようになって、どんどん発展していく。気づいたらビルが立ち並び、夜は星も見えないし、朝に小鳥のさえずりが聞こえることもない。最初のおうちが建てられてから何代もあとのこと。

 コンクリートに囲まれて、それによって暮らしは豊かになったけれども、いいところとそうじゃないところを忘れちゃいけないよと、息子と絵本を読みながら大切なことをリマインドされます。

 仕事で直接プラスに結び付くかどうかは疑問ですが、キャリアや人生を立ち止まって考える時に必ず登場する「一長一短」を別の形でうまく表現した絵本だと思います。

綱川明美さん(撮影/写真映像部・松永卓也)

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