ベルクすねおり店の各レジに設置されているイス。待機しているときに座っている従業員が多いという(写真:編集部・木村聡史)
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 人手不足が深刻する中、企業側は従業員を確保しようと職場環境の改善に取り組んでいる。レジでの接客を座ってもできるようにするイスの設置はその一例だ。一方、「働く側」も声を上げ始めている。AERA 2024年7月29日号より。

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 レジへのイスの設置に関しては「働く側」からも改善に向けた声が上がっている。

 文教大学4年の茂木楓さん(22)は、加入する労働組合「首都圏学生ユニオン」(東京)の有志らと「#座ってちゃダメですかプロジェクト」という活動を行う。きっかけは2021年から続けているレジ打ちのアルバイトだった。

「埼玉県内の大手スーパーで、多いときは週に6日、フルタイムで働いていました。休憩をはさんで忙しい日には3~4時間立ちっぱなしのこともあり、きつい仕事。そこで負担を減らすために、ユニオンから『レジにイスを置けないか』と会社に要望したんです」

ネット署名に2万筆

 働いてみて実感したのは深刻な人手不足だ。スーパーの仕事は土日がとくに忙しい。でもパート従業員の中にはたとえば子どもの行事の送り迎えなどで休む人もいて、しわ寄せはアルバイトに来る。しかし「スーパーの仕事はきつい」と世間の人もわかっているので、なかなか働き手は集まらない。

「やめてしまう人の多さも実感していました。最初に『レジにイスを』と交渉する際に目的として挙げたのも『負担軽減による人手不足解消』からでした」

 要望をうけて会社は一部店舗で試験的にイスを設置したが、結局見送りに。「社内アンケートで3割が反対だったから」だ。「『品出し担当は忙しいんだから、座ってる暇があるならこっちに人を補充して』『座って休んでる間の賃金は発生しませんよね』みたいな意見がありました」

 会社と交渉する中で、世論を巻き込んだ方向も模索し始めた茂木さん。22年にはユニオンの有志と「立ったままの仕事」をする人たちの状況改善を呼びかけるネット署名を行い、約2万2千筆の賛同を集めた。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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