リクルートワークス研究所の労働需給シミュレーション:労働政策研究・研修機構の「労働力需給の推計-労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計-」の手法を参考に算出。公的機関が公表している将来推計人口や名目GDP予測などのデータを盛り込んで分析した。

 介護などの生活維持サービスにのみ人材を供給すれば社会は何とか回せるだろう。しかし、そういう未来がはっきりと見えてしまう社会に若者はとどまってくれるだろうか。若手人材の国外流出はすでに始まっている。

地方圏で低い充足率

 地域別の予測に目を移そう。人口が都市圏に流出しやすい地方圏で労働需給ギャップが大きくなる傾向がある。とはいえ、生活維持サービスの労働力の充足率は地場産業の集積度合いなどにも左右されることに留意が必要だ。

 40年の時点で生活維持サービスの労働力の充足率が最も低い新潟県(58%)、2番目に低い京都府(58.6%)、4番目の長野県(60.1%)、5番目の兵庫県(62.9%)を含め、これらの地域に共通するのは「一定の経済規模があり、観光や製造業などの“外向けの産業”がありながら、住民の生活維持サービスにも人材を供給しなくてはならない難しさ」だという。

「労働供給制約下においては十分な働き手・担い手を輩出できなければ、二兎を追うのは難しくなってしまいます。賃金が高く、魅力的な職場になるかもしれない『外向けの産業』があることで、地域の生活維持サービスの担い手が吸い取られてしまいます」(古屋さん)

 一方、人口が東京都の20分の1以下の島根県では充足率89.1%と比較的需給ギャップが少ないことも目を引く。なぜこうなるのか。古屋さんは一つの仮説として、働く女性の比率、子育て世代の女性の有業率が、島根県はいずれも全国1位であることが作用している可能性を挙げる。「性別や年齢などに関係なく、誰もが活躍できる社会をつくることなしに、今後の日本での生活維持サービスは成り立ちません。これからは多様な人が働きやすい企業文化や労働環境を構築できているかが大きなポイントになります」

 都市部も安心はできない。最も人手が充足している東京都でも40年時点で109%とぎりぎりの水準だ。このことは、右から左に人を移せば何とかなるわけではない、という事実を示す。

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