人材不足に悩む介護の現場では、外国人の働き手の受け入れも進みつつある
この記事の写真をすべて見る

 リクルートワークス研究所は昨年、「2040年に1100万人の働き手が不足する」という衝撃的な予測を発表した。同研究所の古屋星斗主任研究員に論点を解説してもらった。AERA 2024年7月29日号より。

【図表を見る】「2040年に1100万人の働き手が不足する!?」はこちら

*  *  *

 日本社会がこれから迎える「人手不足」は、これまでの単なる人手不足とは根本的に異なる──。リクルートワークス研究所の「日本の労働需給シミュレーション」を主導した、古屋星斗主任研究員はそう強調する。

 なぜなら、いま日本が直面しているのは人口動態の変化に起因する人手不足の始まりだからだ。景況感や企業業績の良しあしとは関係なく、日本全体の労働供給量がボトルネックになって発生する、未曽有の少子高齢化に伴う現役世代人口の減少なのだ。

 2040年には20年と比べて総人口が1523万人減る。この減少幅の94%に当たる1428万人を生産年齢人口の減少が占める。人は加齢とともに労働の供給者側から消費者側へと徐々にシフトしていく。そんな「労働の消費者の割合が歴史上最も多い社会」を、私たちは迎えようとしているのだ。

介護サービス25%不足

 これから起きる「構造的な働き手不足」(労働供給制約)で最も懸念されるのが、生活を維持するために必要な労働力を供給できなくなるという課題だ。リクルートワークス研究所の職種別の労働需給シミュレーションによると、40年には介護サービス職で25.2%、ドライバー職で24.1%、建設職で22.0%不足する。こうした数字から浮き彫りになるのは、「生活にいっぱいいっぱいで仕事どころではなくなってしまう社会」だ。保育や介護サービスを受けられなくなり、宅配便の遅延が当たり前になり、ゴミの処理や回収が滞り、災害からの復旧もままならなくなる。こうした生活維持サービスの低下や消滅は生活水準の低下にとどまらない、と古屋さんは警鐘を鳴らす。

「生活維持サービスに現役の労働力を回さざるを得ないために、先端分野に対する人材供給が後回しになり、イノベーションが一層停滞するという副作用も懸念されます」

次のページ