国から地方自治体への交付金が、コンサルタントに狙われている。中には悪質なコンサルタントに踊らされている自治体もあるという。背景には何があるのか。AERA 2024年7月22日号より。
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今、新たな「地方創生バブル」が生まれている。狙われているのは、デジタル田園都市国家構想という交付金だ。
この地方創生マネーを使って、人口約3千人の村が、デジタル農村を作ろうとしている。だが、実質的に主導しているのは民間企業だ。
北海道・十勝にある更別(さらべつ)村は、デジタルで地域の課題解決を目指す「スーパービレッジ構想」を進めている。村議会の議事録や公開資料を読む限り、22年から今年春までの予算は約14億円。うち、投じられた交付金は約10.5億円にのぼる。
村はこんな未来を予想した。スマホから注文すれば、店で買ったものをロボットが配送。自動運転車両が役場と温泉、診療所を往復。病院の予約もできる。ウェアラブル端末で測定したバイタル、睡眠などの情報を健康アプリに記録する。
昨年4月、視察した河野太郎デジタル大臣は記者会見でこう期待を込めた。「まずは十勝を中心に、将来的には全国的に横展開を進めていきたい」
ただ、現実は厳しかった。
配送ロボットは雪が積もると道路を走れなくなった。自動運転車両は不具合が続き、一時運休に。貸し出し用のスマホとして、中古スマホ800台を購入したが、貸し出されたのは昨年9月の村議会答弁によると80台強。元村民の30代女性は言う。
「村の実態に合っていません。高齢者はデジタルを使いこなせないし、デジタルの需要がある若者人口はとても少ないのです。それよりも、地域を支える若者の雇用の場を作ることに力を入れてほしいです」
村議会では「村民の要望や意見が反映されていないという声は少なくありません」という訴えもあった。
この事業を実際に動かしているのは、村と企業が昨年作った「ソーシャルナレッジバンク合同会社」という会社だ。事業予算のほとんどがこの会社に渡っている。村と地元企業4社、そして東京の企業4社の計9者でつくる。この会社の代表社員は、「長大」という東京の建設コンサルタントだ。