AERA 2024年7月22日号より

 だが、村議会も事業の詳細がわからない。今年3月も村議から批判が出た。

「事業の受注者である株式会社長大が事業の発注者であるソーシャルナレッジバンク社の代表社員でもあるという利益相反の構造がある」

職員の価値観が背景「自治体はいいカモ」

 不正が起こったとしても、民間企業だから使途がわかりにくい。東京五輪のときもそうだった。組織委員会は民間団体ということで情報公開の対象ではないとされた。奈良女子大学の中山徹名誉教授(自治体政策学)は言う。

「企業主導で始まると、企業の経営上の秘密ということになり、事業についての情報がなかなか出てこなくなります。情報公開が必要です」

 更別村は、デジタル田園都市国家構想交付金、地方創生臨時交付金(コロナ交付金)を使っている。今年度までの事業費14億円の4分の3が国の交付金だ。

「補助率が大きく、金額が大きいと、企業がまだ開発できていないのに、自治体の事業に採択されることがあります。大阪府の空飛ぶクルマもそうですが、自治体が企業の開発費まで負担してしまっています」(中山名誉教授)

「自治体はいいカモになりやすい」と話すのは、ある自治体のDX担当者だ。結果は二の次で、予算を使ったことが一つの成果。こう考える職員の価値観が、結果を出さなくていい悪質なコンサルを招くという。

「コンサルに振り回されて何年も無駄にしたら、その分だけ住民サービスの向上や業務の効率化が遅れます。役人が優秀なコンサルかどうか目利きしなければなりません」(担当者)

 交付金に寄ってくるコンサルに踊らされないために、何ができるのか。まちビジネス事業家の木下斉さんは言う。

「役所で癒着や横領の問題があると、競争入札にすべきだといわれます。癒着の温床にならないように、ジョブローテーションで異動もさせています。ですが、癒着や横領は裁判すればいい話。専門職員を養成し、その職員が外注すれば、コンサルや業者と対等に話せて内容を確認できます」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2024年7月22日号より抜粋

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