AERA 2024年7月22日号より

旧来型の質問はNG

 働き手不足が深刻化するのに伴い、生き方・働き方を決める主権が働く個人にシフトしつつある、と藤井さんは唱える。そうした中、面接にも変化が求められているという。

「あなたは我が社にどんな貢献ができますか」と問いただす旧来型の面接はNG。応募者が人生で何を最も大事に思い、キャリアをどう伸ばしたいと考えているのか。そのために、どんな制約があると感じているのか。そうした個人の特性や希望に関心を持って傾聴する面接官と、「尋問」のようなスタイルで面接に臨む面接官とでは、面接を受ける側の印象は全く異なる。今は複数の企業の面接を同時進行で受けるのが当たり前。しかも、一人で複数社の内定を獲得する人も少なくない。面接でどれだけ対話を重ね、入社後の仕事や生活スタイル、将来のライフキャリアをイメージできるかが内定受諾の決め手になる傾向も浮かんでいる。

 藤井さんは言う。

「最後に選ばれる企業になるためには、将来の仲間に接する気持ちで、どうすればその人の才能を開花させ、力を発揮してもらえるのかについて、どれだけ真剣に考えられるかが問われています。そのために必要なのは面接官の聞く力です」

 面接は、採用に値する人材かを企業から「選考」されるだけの場ではなく、その企業はキャリアを積むのにふさわしい組織か、自分に合う会社か、個人が見定める場でもある。「面接官のほうが見られている」という現実はこんな回答からも浮かぶ。

 東京都の出版社勤務の女性(30)は学生時代の就職活動を振り返り、「面接官と会社のイメージが重なる面も否めません」と打ち明ける。

 ある企業の2次、3次面接でのこと。いずれも面接官席に居並ぶのは高齢の男性ばかりだった。そのときふと、「このおじいちゃんたちを喜ばすことができれば、受かるんだろうな」「ちょっとおバカな女の子を演じたらいいんだ」との考えがよぎった。そして実際、そういうキャラを意識して面接に臨んだところ、狙いが的中したのか内定を得ることができた。しかしその後、「この会社にいても、ずっとあのおじいちゃんたちに媚を売らないといけないんだろうな」との思いが膨らみ、結局内定を辞退したという。女性は就活時、人事担当者や面接官の言葉選びにも意識を払っていたと打ち明ける。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の「土用の丑の日」は7月と8月の2回!Amazonでおいしい鰻(うなぎ)をお取り寄せ♪
次のページ