
「働き方」の決定権が個人にシフトする中、就職面接にも異変が起きている。面接は企業から「選考」されるだけの場ではない。応募者が面接官に「逆質問」するシーンも当たり前になりつつある。AERA 2024年7月22日号より。
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企業と個人が対等化している状況は、面接での「逆質問」のシーンにも表れていることがアエラのアンケートで浮かんだ。
東京都の人材紹介会社に勤務する役員男性(58)は管理職採用の面接を受けた際、「自分が想定する仕事と実際の内容にギャップがないか」確認するため、営業先の部署や競合企業について逆質問した。面接官は「具体的に仕事の内容をイメージされていますね」と歓迎してくれたという。男性は「逆質問」という呼び方には違和感があると話す。
「面接は、企業と応募者が互いにコミュニケーションし、働く条件のすり合わせをする場だと考えています。ですから、応募した側が質問するのが、『逆』だとは全く思いません」
この男性は、別の企業の中途採用面接でも人事担当者が「会社説明をします」と話し始めた際、「私から会社説明をしますので、間違っているところを修正していただけますか」と切り出し、企業の市場環境を分析する「3C分析」を披露し、驚かれたこともあると明かした。
逆質問は転職の場面でより顕著だという。
「採用する企業、応募する個人ともにすり合わせしたいポイントが多様で、それらの具体的な内容や優先順位などを確認するため、互いに質問し合う場面は新卒の就活よりも多くなる傾向にあります」
こう指摘するのはリクルートの藤井薫HR統括編集長だ。
キャリア採用の場合、求めるスキルや経験、提供できる待遇が具体化している企業が多く、個人の側もキャリアを積んだ人ほど仕事の内容や待遇、働き方など条件面で受け入れ可能なラインが明確化しているからだ。
逆質問はごく一部のスーパー人材に限らない。サービス業で働く40代の会社員女性は「会社を選ぶ際に外せない条件は何ですか」と今春の中途採用面接で問われた際、「逆に採用するにあたって求めている人物像を教えてください」と逆質問したという。「お互いに選ぶ立場であることを重んじていました」と振り返る。