“無関心”にどう立ち向かうかも大きな課題

――日本のアーティストが社会的なメッセ―ジを発信したり、行動を起こすことはまだまだ少ないですよね。

「政治的なことはあまり言わないほうが崇高」「アートを通して表現するべき」みたいな考え方もありますよね。でも、アーティストというのは人間のことを考え、追求し、人間に何かを伝える職業。生活に密着しているし、切り離すことはできないと思うんです。自分たちが自由に表現できる環境を守っていくためにも、社会に声を上げることは必要だと思います。一方で若い人たちの動きに勇気をもらえることもあります。アメリカで起きたプロテスト運動も、コロムビア大学を筆頭に学生たちからはじまりましたよね。若い人たちが先にアクションを起こし、教授たちの発言も活発になりました。日本の大学でも少しずつプロテスト運動が起きていますが、「大人が不甲斐なくて、本当にごめん」と思うことは多いですし、“無関心”にどう立ち向かうかも大きな課題だと思っています。

――「Watermelon Seeds Fundraiser」がガザの状況に関心を持つ人が増えるきっかけになればいいなと思います。

 報道も減っている印象があるので、たとえばガザに入っているジャーナリストをフォローして現地の状況を知ってもらえたらいいなと思っています。調べてもらえれば、「どうにかしなきゃ」と心が動くと思うので……。あと、普段の生活で使っているお金がどういうふうに回っているのか、どう世界につながっているかについても考えないといけないですよね。何気なく買っているもののお金が回りまわって、兵器の購入や開発などに使われていることもある。そういった構造を理解することで、お金の流れを生み出す作用を良い方向に持っていくことも可能じゃないかなって。今回のオークションが、そういう思考やビジョンにつながったらいいなと思っています。

――私たちの日常ともつながっている問題だと。

 はい。こういう発信をするたびに「自分の生活で手いっぱいの人もいるんだよ」「“何も言わないのは加担だ”というのは残酷だし、それこそ人を排除することになるのでは?」という意見も寄せられます。

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今回のオークションで伝えたいこと