「父(坂本龍一さん)だったらどうしただろう?」とずっと考えていたと語る、坂本美雨さん(撮影/MURAKEN)

「父だったらどうしただろう?」とずっと考えていた

――パレスチナの歴史はとても複雑で、現在のイスラエル軍によるガザへの攻撃に関しても、さまざまな意見があります。ただ、立場を超えて、「子どもたちを助ける」というのは絶対に必要なことだと思うのですが。

 そう思います。ガザに関する情報を発信、シェアするようになってから、私のところにもいろいろなコメントが寄せられるようになりました。「イスラエルの人も殺されている」「ハマス側も悪かったよね」といった意見もありましたが、今のガザで行われていることはジェノサイドであり、明確な国際法違反です。そして、その国を欧米諸国が武器や資金提供をしてバックアップしているわけです。国際社会が有効な手だてを示せないなか、何の罪もない子どもたちが殺され、飢えている。国連(UNRWA=国連パレスチナ難民救済機構)が立ち上げた学校や食糧の倉庫も爆撃されていますが、そこには日本からの資金も入っています。もちろん当事国や国際社会が停戦に向けて動くべきであって、そこに個人レベルでできることはデモや政府に意見を届けることなど小さな力かもしれない。それでも今は応急処置的にでも、目の前の命のためになにかしなくちゃいけないと思うんです。

 今回の「Watermelon Seeds Fundraiser」にはたくさんのアーティストが出品してくれましたが、それでも集められる金額は必要な規模に比べたら微々たるものでしょう。でも、目の前に血を流している人がいるんだから、とりあえず止血しなくちゃいけない。そんな思いでこのプロジェクトを立ち上げたんですよね。

――坂本龍一さんも、東日本大震災の被災地支援や森林保全活動、東京・神宮外苑再 開発計画への抗議など、さまざまな社会運動に関わってきました。

 はい。発信をしだしたのは、父(坂本龍一)が蒔いてくれた種でもあると思います。「父だったらどうしただろう?」 とずっと考えていたので。

 もし父が生きていたら、パレスチナ問題に対して怒り、悲しみ、できることは何でもやったはず。一度知ったら、もう知らないふりはできない人でしたし、そういう気質は受け継いでいるかもしれません。「自分の立場をどう使うべきか」ということ、反対意見に傷つき過ぎず、強くいる様もたくさんみせてもらいましたから。

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“無関心”にどう立ち向かうか