今回のオークション参加者には坂本美雨さん自ら連絡をとって協力を依頼したという(撮影/MURAKEN)

 やりとりをしていると、一人ひとりの顔が見えてくるんですね。名前や家族構成、「こんな仕事、こんな勉強をしていた」ということだったり、破壊される前の家の暮らしぶりや、今の避難生活のこと…。英語が堪能な方が多くて、学ぶことに意欲的で、そして、とにかく子どもたちがかわいい! そうやって人柄がわかってくると、 もう他人じゃないですよね。

――ガザの人たちを身近に感じるようになった。

 そうなんです。友情も芽生えてくるし、「とにかく生き延びてほしい」 という気持ちが強くなって。いちばん最初にやりとりし始めたのはガザ南部ハンユニスに住んでいる青年だったんですが、1 週間くらい連絡が取れなくなったことがあっ たんですよ。心配で気が気ではなかったのですが、「ハンユニスが爆撃されて、ラファに避難した」と連絡があって……。

「自分は安全な場所で家族と何不自由ない生活を送っている。だけどあの人たちはたった今も命が危険な状況にある」という意識を常に抱きながら 9カ月過ごしてきて、娘を愛おしく思えば同時にガザの子どもたちを思い、苦しくて音楽活動も難しくなったんです。ガザの人たちからメッセージがくるということは、私のインスタも見られるということなので、彼らが見たらどう思うだろうといつも意識していた。その中で、日々パレスチナのことを思っていることを伝えたいと思い始めました。世界に無視されていると感じている彼らに「日本でもあなたたちのことを考えてる人がいる」と知って欲しかったんです。さらに「自分にできることは何だろう?」と考え、「Watermelon Seeds Fundraiser」を立ち上げる準備をはじめました。

――参加を表明している方々には、美雨さんが直接依頼したそうですね。

 ガザの今の状況を説明して、日本のアーティストとして何かできないか、特に子どもたちに対して、一緒に手を差し伸べてくれないでしょうかとお願いしました。もちろん様々な事情や意識の違いがありすべての方に賛同いただけたわけではないですが、多くの方が「一緒にやるよ」と言ってくれて、オークションのために貴重なものを出品してくださって。本当に感謝しています。

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「父だったらどうしただろう?」と考えた