AERA 2024年7月15日号より

 非正規雇用で働く埼玉県在住の女性(50)は、大学卒業後、希望する職種には就けず、非正規職員からキャリアをスタートした。転職して、正社員になったが突如、親の介護をすることに。度重なる早退や年休取得に、「現場の雰囲気がピリつき、やむを得ず派遣での働き方に切り替えました」と振り返る。

 その後、30代で結婚、出産。正社員ではないため育休制度は利用できず、退職を余儀なくされた。早々に復職を試みたが、幼い子を抱えての正社員への道は険しかった。キャリアを積んできたはずが、

「非正規だと評価につながりづらいことを痛感しました」

 とこぼす。非正規雇用の職員として働き始めたが、正規職員からマウントを取られることが日常茶飯事だったという。「私はこんな雑務はしなくてもいい」といった発言をされたり、給与明細が届くと「非常勤はこんなもらえないわよね」と言われたり。女性は言う。

「不適切にもほどがあるだろうって思いました。そういう雰囲気に長く晒されていると、心がすさんでいくんですよね」

 ここには長くはいられない。そう思い、転職を決めた時、他の非正規職員たちも相次いで辞表を出していたことを知った。後に、その職場が人手不足でてんてこ舞い状態になっていたとの噂を耳にした。女性は、

「因果応報だと思いましたね。お互いの事情を尊重しあった方が良いのでしょうけど、正規と非正規の人が円満に働く環境ってあるのでしょうか?」

 と首を傾げる。

(フリーランス記者・小野ヒデコ)

AERA 2024年7月15日号より抜粋

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