「就職氷河期世代」はいま40~50代。高学歴であっても、非正規でキャリアをスタートし、そのまま時間が過ぎてしまった人は多い(撮影/写真映像部・松永卓也)
この記事の写真をすべて見る

 少子化による人手不足というニュースを目にする一方、非正規で働く女性は5割を超えている。スキルも意欲もある女性がキャリアを積めず収入も上がらないのはなぜか。AERA 2024年7月15日号より。

【現実はきびしい】「非正規雇用で働く女性の個人年収の平均」はこちら

*  *  *

就職氷河期」とはバブル崩壊後、雇用環境が厳しかった1990~2000年代初めのことだ。この時、就職活動をした人は今40~50代。停滞する経済の影響を受け、正規雇用が減り、非正規雇用が増え始めたのもこの頃だ。

 東京都在住の女性(47)は大学院修了後、希望する研究職の仕事に就くことができず、地元の中小企業に就職。以降、職場が合わなかったり、契約を打ち切られたりして、転職を繰り返してきた。その回数は10回以上だ。正社員も経験したが、非正規雇用の派遣社員時代に痛感したのは「いつ契約が切られるかわからないことの恐怖」だったという。

「派遣というのは、上に気に入られるかどうかなんですよね。原則、会社のために仕事をしてはダメなんだと学びました」

 そう思って働いてきたせいもあって、理想の働き方については「今となってはよくわからない」と打ち明ける。同じ業界で働き続けているが、職種は多岐にわたる。キャリアを築く以前に、働くだけで精一杯だったからだ。女性は言う。

「その時々で生きることに必死だったのが正直なところです」

 22年版の男女共同参画白書によると、労働者全体における非正規雇用労働者の割合は36.7%。男女別にみると男性は21.8%、女性は53.6%に上る。結婚や出産で働き方を変えた女性が多いことが要因のひとつとされているが、日本労働組合総連合会の「非正規雇用で働く女性に関する調査2022」によると、非正規雇用で働く20~59歳の女性の個人年収の平均は167万9千円にとどまる。アエラが6月にインターネット上で実施したアンケートでも、給与の低さを訴える声が多く寄せられた。

正社員からのマウント

 職場で正社員との関係に悩む人も多い。

次のページ