同社は連日、午後5時時点の「ウェザーニューズ」のウェブサイトをチェック。翌日の新座市の予想最高気温が38度を超えると、前日のうちに「リモートワーク推奨」を全社員に告知する。ただ、出社するかしないかは任意。それぞれの業務内容や体調に照らし、社員が自己裁量で在宅勤務に切り替えるかどうかを決める。基準値を39度に設定していた昨年は対象日が8月に2日あり、20人超の社員のうち、約3分の1が出社を控えた。

電気代の手当を支給

 制度導入のきっかけは、熱中症のリスクを目の当たりにしたこと。昨年6月下旬。梅雨明け前にもかかわらず、暑さのため、会社前の駐車場で高齢女性がうずくまって動けなくなっているのを社員が見つけ、救急車を呼んだ。同時期、出勤したばかりの20代の女性社員が熱中症の症状を訴え、社内で介抱する事態も起きた。幸い救急搬送に至らず回復したが、熱中症で倒れる人が周囲で相次いだのは衝撃だった。星川社長は気温の高い日に出社を強制するのは危険と判断し、「推奨デー」の導入を即座に決めた。

 当初、基準値を39度に設定したのは、昨年夏に最寄り駅から会社まで10分足らずの道のりを実際に歩き、「これはきつい」と多くの社員が感じたのが最高気温39度の日だったからだ。しかし、今年は基準値を38度に下げた。その理由について星川社長は「1年たって改めて猛暑を体感し、39度未満でも十分に危険を感じる暑さではないか、と社員と話し合って1度引き下げました」と説明する。

 今年はこれまでに推奨デーが7月に1回、8月に1回あり、いずれも約半数の社員が在宅勤務に切り替えた。社員アンケートでは、ほぼ全員が「継続」を希望。「通勤で体力を消耗せず仕事に集中できた」「(自宅で)エアコンを自由に調整できるので適温で快適だった」といった声が寄せられた。同社は社員の意見も踏まえ、来シーズンはさらに推奨デーの頻度を増やせるよう基準値の見直しを検討している。星川社長は言う。

「コロナ禍が転機になり、営業職もオンラインの商談が増えています。国の熱中症警戒アラートの発令基準も参考にしながら、社員の健康維持と業務の効率化を図る観点から最適な指標を独自に設定し、社員がより快適に働ける環境を牽引(けんいん)したい」

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