AERA 2024年7月1日号より

 東京では、もう一つ話題になっていることがある。それは、今年度から実施されている私立高校の授業料実質無償化の動きだ。

 これまで設けられていた所得制限(世帯年収910万円未満)が撤廃され、私立高校に通う子を持つ全ての家庭に助成金の支給が始まったほか、私立中学に関しても、収入に関係なく保護者が年間10万円を受け取れる授業料助成も始まった。

授業料無償化はずるい

 歓迎すべき動きのようだが、他県から通学する生徒は対象外になることから「ずるい」という声があがるなど不公平感が生じている。また、5月には近隣の神奈川、埼玉、千葉の三つの県の知事がそろって文部科学省などを訪れ、

「税収に恵まれている東京都では私立高校授業料実質無償化などの施策を打ち出し、周辺自治体との地域間格差が拡大している。こうした状況は東京一極集中の流れを加速させる」

 と訴える要望書を提出。3人の知事は、格差が生じないように国の責任と財源で必要な措置を講じることや、自治体間の税源の偏りを抑える地方税の仕組みを構築することを求める事態になっている。

 なにかと話題の私立高校授業料実質無償化。公立ではなく私立の中高一貫校を目指す世帯が増えるのでは、との意見も聞かれたが、実はあまり変化はないようだ。

 子育て世帯の家計に詳しいファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんは、こう分析する。

「東京の場合、実質無償化でも学校にかかる費用が全て賄われるわけではありません。無償化を理由に私立中学受験を目指す家庭は少ないと思います」

 都の制度の場合、助成が出るのは授業料部分のみ。しかも上限額は年間48万4千円になっているため、超える部分は保護者負担となる。例えば、都内で最も授業料の高い玉川学園高等部の国際バカロレアクラスの場合、授業料だけで135万円を超える。最も低い錦城学園は34万8千円と授業料は助成金で賄えるものの、入学金に21万円、年間の設備維持費には12万円がかかる。

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