システムに無理がある

 そもそも、具合が悪い子どもを診るのではなく、健康な子どもの異常を見極めることはかなりのテクニックを要するという。

「学校は健康な子の方が圧倒的に多い。おなかや胸が痛いと病院に来る子には病気のヒントがあります。でもベルトコンベヤー式で1人数十秒しかかけられない中、自覚症状がない子の異常を見極めるのは大変難しい。健診のシステムに無理があります。時間内に早く終えることが一番の目的になってしまっている。児童生徒の悩みを聞いて健診の質を上げるなんてことは問題外なんです。アメリカでは進級のたびに集団健診ではなく、かかりつけ医による個別健診でじっくり一人一人診ます。日本の学校健診はあまり意味がないように思う」(同)

 さまざまな問題が絡み合う学校健診問題。思春期の子どもたちの心理に詳しい和洋女子大学ジェンダー・ダイバーシティ研究所、特別研究員の田口久美子氏は、「思春期の子どもたちは大人が思っている以上に体重や発達のことを気にする」とした上で、こう指摘する。

「健診を早く効率良く回すという大人の都合を優先してきたことが問題。子どもの要求に耳を傾け、どうすれば子どもが安心できるかという視点が抜けている。子どもの人権や自尊感情に関わること。変わらなくてはならない日本の学校教育の象徴であると思います」

 子どもたち自身が健診前に医師が何をどうチェックするのかを知っておくことで不安も軽減できる。当事者は子どもたちであることを忘れてはならない。(ライター・大楽眞衣子)

AERA 2024年6月24日号

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