聴診の際に、着衣の上からでは服が擦れる音が邪魔をするという意見もあるが、千葉県船橋市で複数の小学校の学校医を務める「たけしファミリークリニック」の北垣毅院長は、「着衣の上からでも聴診はできる」と断言する。

「上半身裸の方が確かに情報量は多いです。でも学校健診の目的を考えると、裸にする必要はない。シャツが擦れる音は、シャツを引っ張って聴診器をぐっと密着させればあまり問題にはならない。今は音が増幅できる電子聴診器もあります。第一、子どものかすかな心雑音を拾っても、問題ない場合がほとんどです」(北垣氏)

「効率よく」が優先され

 上半身裸になることで、背骨の状態や虐待の痕、皮膚疾患の発見につながるという声もある。しかし北垣氏はこう話す。

「側弯症の発見は重要ですが、背中をめくれば分かります。虐待の発見については、その子の背景を全く知らないのに短時間で虐待の痕を見つけるのは難しすぎます。アトピーは首や顔でもわかります」

 そもそも学校健診で何をチェックしているかを知る保護者は少ない。北垣氏によると、聴診では心音や呼吸音の異常、視触診では側弯症の有無、甲状腺や皮膚に異常はないかなどを調べるが、詳細は各学校医に委ねられているという。そして医師によってレベルや考え方がかなり異なると北垣氏は指摘する。

「学校医になるための特別な資格はいりません。だから人によってレベルはまちまちなんです。小児科や内科でない医師が請け負っている場合もあります。心雑音の異常を聞き分けられない学校医がいることも事実ですし、健診の効率が悪いと威張り散らす人もいます」

 クリニックの短い昼休みに来る学校医もいて、その場合、効率よく時間内に終わらせることが優先される。そのために脱衣を求める場合もある。

「産業医は公募ですが、学校医は原則、地域の医師会の開業医が割り当てられる。学校は学校医を選べません。どんな医師でも学校が辞めさせることはできない。最終的には学校医のやり方に従うしかない」(北垣氏)

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