(写真:Getty Images)
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 学校の健診で上半身裸になる必要性はあるのか。保護者のSNS投稿に端を発し、議論が巻き起こっている。学校医によって大きく対応が分かれるこの問題。子ども、保護者、学校現場、学校医はどう受け止めているのか。AERA2024年6月24日号より。

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「娘たちが上半身裸で学校健診を受けていると知ってとてもショックでした」

 小学5年と中学2年の娘を持つ40代女性は、昨年娘たちに聞いて衝撃を受けた。二人は神奈川県川崎市内の公立校に通っている。学校医はいずれも男性だ。下着を外して体操服を着て待ち、健診時は仕切られたブースの中で袖を脱ぎ、首に体操服をかけた状態で胸をさらすという。

 これまでに学校から知らされた記憶はなく、同じ学校に通う女子の母親10人ほどに聞いて回ったが、誰も上半身裸になる事実を知らなかった。子どもたちに尋ねると「本当にいや」「高学年女子はセクハラだよねって言ってる」と明かした。

 女性は市や学校に訴え出たが、市は「医師会などのこともあるので時間のかかる問題」と返答。学校からは「学校医のやり方なので変更は難しい」「学校は教育機関であって保健機関ではないのでこれ以上できることはありません」と告げられ、なすすべもなく絶望した。そして今年度も脱衣での健診が行われた。

文科省から「配慮」通知

「同じ市内、区内にある隣の中学の健診はスポブラ着用でOKだそうです。かかりつけ医は女性ですが、聴診器をあてるときはいつも肌着を少し持ち上げるだけ。なぜ娘の中学では中学3年生まで上半身裸になる必要があるのでしょうか。納得がいきません」

 今年1月、文部科学省から健康診断では子どもたちのプライバシーや心情への配慮が重要とする通知が出た。原則は着衣やタオルなどで覆うとしたものの、「正確な検査・診察に支障のない範囲で」というあいまいさを残した。それゆえ健診の方法は各学校医の方針に委ねられる。

 上半身裸はやむを得ないとする保護者や養護教諭の声もある。

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