そもそも日にちを知らないから、スルーされてしまうのも無理はない。牛窪さんはこう続ける。

「父の日がいつか、SNSやネットニュースなどで知る方が多いと思います。おそらく、いつだったか覚えていないために、直前になってネットで知る、探すという傾向が強いのでしょう」

 たしかに、ネット検索で「父の日」と入力すると、その次の候補キーワードとして自動的に「いつ」と出てくる。
 

マザーズデーはあるのに

 父の日に向けたキャンペーンなどを目にする機会が少ないため、気づきにくいのかもしれない。実際、野球ファンの牛窪さんは、父の日に合わせたプロ野球のイベントの少なさを実感している。

「母の日は、プロ野球全体が『マザーズデー』と称したイベントを開催して、その日は選手がピンク色のバッティング手袋やリストバンド、プロテクターをして試合をするほか、様々なイベントが球場で行われます。でも、父の日は大半が何にもないんですよ(笑)。

 先週、観戦した阪神タイガースの試合のテーマは、父親ではなく『家族(ファミリーデー)』。父の日当日も、例年、ほんの一部の選手がブルーのバットを持つぐらいです。他球団も、父の日関連の大々的なイベントは非常に数少ない状況です」

 また、父の日にプレゼントしても「あげた甲斐がない」のが盛り上がらない理由なのではないかと、牛窪さんは自身の経験もふまえて指摘する。

「父親に身に着けるものを贈ってもどこかにしまい込んで、あまり使ってくれないということが多い。母はプレゼントされたことをきちんと覚えていて、大事に使ってくれたりする。父親が『たまたまあったから』とタンスの奥から引っ張り出してきたものが、実は娘が以前に父の日にプレゼントしたもので、口喧嘩になったという話もよく聞きます」

 やはり、感謝を伝える優先順位が高いのは、父よりも母なのか。牛窪さんは「次の世代からは変わってくるのでは」と話す。

「いまのZ世代やゆとり世代がお父さんになるときには、身近なイクメンが増えていて、お父さんへの感謝の気持ちは変わってくるかもしれません。それよりも上の世代は、まだまだ圧倒的に子育ての中心が母親なので、やはり日々世話をしてくれた母への感謝のほうが圧倒的に大きいのでしょう」
 

 では、父の日に何を贈ればいいか。最近のトレンドについて、牛窪さんに聞いた。

「以前は食品やお酒などが多かったんですが、最近は健康グッズや美容グッズの需要が高いと言われています。男性用の美活もの、例えば男性用日傘なども売れています。

 また、食品やグルメを贈るときには自分たちの分も“ついで買い”し、離れて住んでいる家族でライブ動画をつないで食べて、「どう?」「美味しい?」と一緒に楽しむ傾向があります」

 まだ間に合うならば、「お父さん、ありがとう」と。感謝の言葉はプライスレスの贈り物だ!(AERA dot.編集部・太田裕子)

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