おおたとしまささん(50)/雑誌の編集者を経て、現在は教育に関する現場取材と執筆を精力的に行う。中高の教員免許を持ち、私立小学校での教員経験も。著書に『男子校の性教育2.0』(写真:本人提供)

 一方で女子に発するべきメッセージの一つとしては「ガラスの天井を打ち破れ」と勇気づける方向のものがありますよね。つまり、共学だとある意味ダブルスタンダードなメッセージを、一緒に教室にいる男女に同時に発しないといけない難しさがある。

 加えて「思春期における男女の発達の違い」への考慮も必要です。一般的に心身ともに女の子よりも男の子の方が、特に思春期においては1年から1年半ほど遅れる。「同い年のお姉さん」に囲まれて一時的に弱者の立場に置かれてしまう男の子に、「君たちは君たちのペースでいいんだよ」と伝えることができるという意味でも、男子校という環境設定をあえて残しておく。軽視できない点だと思います。

友野:「社会は男女で構成されているんだから、学校も男女共学で」という主張がありますが、学校が社会の縮図である必要はないと思います。

 一つの理由としては、共学校の方が「性差」をより意識する機会が多いこと。あるとき、共学の大学の模擬授業で教師役の女子学生が「次は女子にあてます」と。何げなく言ったのだと思いますが、女子大では絶対に出ない言葉です。共学の環境の方が、自分が「女である、男である」を常に、過剰に意識させられるという象徴的な場面でした。その意味でも、別学という選択肢もあっていいと私は思いますね。

別学で学びたい人たちの権利を奪う正当性は?

おおた:別学校と共学校では「学校の空気」が違うんです。男子校の生徒って、重なり合ったり抱き合ったり、それはもうスキンシップが濃密です(笑)。女の子の目がないからこその振る舞いで、要は心理的安全が保たれている環境。それだけでも男子校の価値はあると私は感じます。「男か女かっていう要素をとっぱらった時の『素の自分』はどうなのか」を感じることができる、稀有な空間とも言えると思います。

 男の子と女の子、それぞれに違うメッセージを発する必要がある共学校でも、そのジェンダーギャップを両方から埋めていくために、たとえば生徒たちが男子校留学や女子校留学をしてみて、「あ、男の子だけだと自分はこういう感じになるんだ」というような経験をしてみる。それも一つの手ですよね。

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