【JR東日本】EF65/かつては、ブルートレイン「富士」や「北斗星」などを牽引していた。今は、砕石(バラスト)の運搬や入れ替え作業が主な役目だ

 そんなキハ40形が北条鉄道に来たきっかけは、同鉄道の車両不足だった。ただ、新車は約2億円する。そのような予算はない。そこで中古の車両を探し、各地の鉄道会社に当たってやっと見つけたのが、JR五能線を走っていたキハ40形だった。しかし、引退車両とは言え、中古で300万円する。秋田からの輸送費やトイレの撤去といった改造費を含めると、合計で約2900万円が必要。そこでクラウドファンディングを行うと、わずか2カ月で予想を大きく上回る約1300万円が集まった。こうして22年3月、キハ40形は北条鉄道を走り始めた。

往年のままが魅力

 車内はそのまま。かつて走っていたJR五能線の路線図や、現地の高校生の落書きまで残っている。外装もほとんど往年のままだ。これが、鉄道ファンの心を鷲掴みにした。全国からファンが訪れるようになり、キハ40形を導入した21年度の営業収益は約8300万円、翌22年度は9500万円と過去最高を記録した。今では「廃止議論はなくなった」と藤井さん。

「予想外でした。今もキハ40形を中心にしたイベントをやっていますが、もっと盛り上げていきたい」(藤井さん)

 あと何年走り続けるかわからない今だからこそ、国鉄型車両に会いに、乗りに行こう。昭和の、そして国鉄の風景を訪ねて。(編集部・野村昌二)

【北条鉄道】キハ40形/JR五能線を走っていた車両で、白に青色の線のデザインが特徴だ。引退して余生を送るどころか、北条鉄道の「救世主」となった(写真:北条鉄道)

AERA 2024年6月17日号

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