【しなの鉄道】115系/国鉄時代を象徴するこの「湘南色」は、とりわけ人気が高い。列車は、雄大な浅間山の麓などを走り、沿線は絶景のオンパレードだ(写真:しなの鉄道)

 そして、国鉄型車両の「いかにも国鉄」としたデザインに魅せられる、と話す。

「奇を衒(てら)わず、かつ機能的で、量産にも適したベーシックな雰囲気のデザインです。キハ40形の場合、運転席の窓は正面から側面の視界も確保できる、いわゆる『パノラミックウィンドウ』。さらに、運転士からの視界および事故衝突時の運転士保護も勘案した高運転台。そして中央にある、増結などに対応した貫通扉も、いかにも国鉄らしくて好ましく思えます」

高度成長期支えた

 国鉄型車両は「昭和のシンボル」でもあった。

「元祖・鉄子」の愛称でも知られ、鉄道旅を愛するフォトライターの矢野直美さんはこう話す。

「日本の高度成長期を支えるために、日本の技術屋さんが研究を重ねてつくったのが国鉄型車両です。特にディーゼルカーの登場で、街と街を結ぶようになりました。そうした昭和時代につくられた車両に対する思い入れがあります」

 矢野さんは、キハ40形との思い出が一番あると言う。

「私が鉄道で旅をし始めたころ、一番出会うことが多い車両でした。坂道や急勾配の時にエンジン音が高まったり、下っていく時はブレーキがキュンキュン鳴ったり。そういう、『乗ってる感』がすごくありました。今も現役で頑張って走っているのを見ると、嬉しくなって応援したくなります」

 そんな国鉄型車両は、苦境に立つローカル線の救世主にもなっている。

「この白と青色のラインが入った車両が、のどかな田舎の景色の中を走っているのがみなさん感慨深いようです。内装は全く変えていません。そこがまた、魅力があるようです」

 と話すのは、兵庫県南部の田園地帯を走る第三セクター「北条鉄道(全長13.6キロ)」常務取締役兼総務企画部長の藤井秀明さんだ。

 北条鉄道は、私鉄「播州鉄道」として1915年に営業を開始。43年に国鉄に買収され「北条線」となる。国鉄改革に伴い、85年に県や加西市などが株を持つ第三セクターの「北条鉄道」となった。だが経営は厳しく、2020年度の決算は2300万円の赤字。常に廃線議論と隣りあわせ。そこにやってきたのが、昭和生まれの「キハ40形」だ。つくられたのは1979年。秋田県と青森県を結ぶJR五能線を走り、2021年3月に引退していた。

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