信頼できる親友くんと

 出発当日。新幹線が停車する駅まで送ると、担任の先生に「いまコウに、今日はめっちゃ歩くぞ~と言ったら、覚悟してますよん!と笑っていました。様子を見ながら無理なことは無理と言うように伝えていきますね」と言われました。この言葉は本当にありがたく、息子への一番の寄り添いだと思いました。仲間と一緒だと普段より無理をしてしまうのも仕方ないことです。帰宅後にしっかりリハビリでメンテナンスをすることにして、「思い切り楽しんでね」と息子に伝えました。

 6年生は日本史を学んでいたため、奈良では「令和になったばかりのタイミング(2019年6月)で大化の改新が起きた“その場所”に行ったこと」、京都では「徳川家康が歩いた廊下を自分も通ったこと」「“清水の舞台から飛び降りる”の意味を高さを見て実感する」など、とても良い経験をしたようです。

 トータルでかなりの距離を移動しましたが、息子は一度も離脱することなく黙々と歩き続けたそうです。修学旅行後に担任の先生にお礼を伝えると、「僕はなーんにもしていません(笑)。いつもコウの周りには友達がいて、階段を上がる時も自然とコウの前と横に付くんですよ。班が違う子もササッと来て荷物を持ったり…それがもう、このクラスでは当然なんですね。本当に良い奴らですよ」と言われました。

 信頼できる親友くんと息子のプライドが良い様にリンクしてくれたおかげで、私と2人なら絶対に車いすを使う距離を歩き切ることができたのだと思います。大人が入り込めない世界こそ、最高のリハビリ環境ですね。そしてこの時に同じ班だった男子たちは、高2になった今もとても親しくしてくれています。

AERAオンライン限定記事

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼