SDGsの理念と共鳴するように、社会課題の解決のために活動する2000年代生まれの若者がいる。慶應義塾大学2年の山崎佐知子さんだ。Z世代は社会をどう見ているのか。AERA 2024年6月10日号より。
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1年間に日本で捨てられてしまう食べ物の量は約523万トン。飢餓に苦しむ人々に向けた世界全体の食糧援助量は約440万トンで、その約1.2倍にもなる。国民1人当たり、毎日お茶碗1杯のごはんを捨てている計算で、「食品ロス」は深刻な問題だ。
慶應義塾大学2年の山崎佐知子さん(20)は2021年、「Fairy forest ~もったいないに架け橋を~」というプロジェクトを立ち上げた。おからを使ったグラノーラを開発・販売。収益をこども食堂に寄付する活動を続ける。
おからは豆腐を作る際に発生する豆乳の搾りかすだ。産業廃棄物として処分される。山崎さんがおからの存在を知ったのは中学3年のとき。父親がダイエットのために食べていて、そのおいしさに驚いた。
「多くが捨てられるなんておかしいと思いました。『もったいない』って」
祖父から聞いた食糧難
小学1年だったか2年だったか。山崎さんは祖父から聞いた昔話を強烈に覚えている。夏休みに帰省して、祖父と姉と蝉捕りを楽しんでいたときのことだ。
「祖父が戦後の食糧難について語り出したんです。まともなものはろくに食べられず、蝉すら食べていた、と。なかでもクマゼミはおいしいなんて話もしていて、ものすごい衝撃でした」
食糧に困窮した時代を過ごした人が今、私たちをもてなしてくれる。祖父母は帰省するたびに自分の好きな食べ物を用意してくれた。そのたびに食を大切にしなければいけないという思いは強くなった。
おからは栄養価は高いが、足が早いのがネック。そこでひらめいたのがグラノーラだった。
「乾燥加熱していて日持ちするシンプルな食品。そして、自分だけがおいしいと思うよりも、みんなが毎朝手軽に、コンスタントに食べられるものであれば、食品ロスも減るだろう、と」